現役官僚が2chの国家総合職スレにお答えする[官庁訪問の囲い込みについて]<Part33その2>
今回の対象スレもこちら。
国家総合職スレ Part33 [無断転載禁止]©2ch.net
レス番501から1000まで行こうと思ってたのですが、、、
「囲い込み」の話があったのでそれに言及していたら、そこそこのボリュームになったので、とりあえずそこで切ってみました。
500まではこちら
kasumigasekipeople.hatenablog.com
では、参りましょう
「囲い込み」の話が盛り上がっていたのでちょっと詳しく言及しておいてみましょう。今回書くのはどこか特定の省庁に限らず一般的な話、且つ私の私見です。
もはや遠い昔ですが、私が官庁訪問していた時代から、このテの話、すなわち
「○○省が囲い込みを始めたらしい」
「俺にも接触あった」
「なにそれ知らない、ルール違反じゃね?」
「情弱乙」
というような会話が至る所で乱発されるのです、2chに限らず。
1. なぜ採用チームは囲い込みたくなるのか(仮にやっていたとして)
このブログのいろんな記事で事あるごとに書いているのですが、官庁訪問に限らず就職活動の第一原則は「採用する側の気持ちになって戦略練ったり思考を深めたりしてください」
採用する側からすると、官庁訪問のシステムって超怖いんですよ。試験期間中は志望者と接触できないし、どの学生が合格したかも直前にならないとわからない、知っている学生が合格していても、官庁訪問初日にならないと誰が来るのかさっぱりわからない。蓋を開けたら明らかに「低レベル」(雑な言葉ですが、学生のレベル云々については今回の本筋ではないのであえて使いました)な学生しか訪問していなかったら・・・死にます、採用担当者が、色々な意味で。
そうすると何が起こるかというと、是非うちに官庁訪問にきてね、と勧誘するのは当然のこと、さらに学生に対してちょっとしたリップサービスをしちゃったりするかもしれません。つまり、「いやぁ君はなかなか見込みがあるなぁ」とかね。こんなこと言われたら学生としては、
「あれ、俺評価されてる?」「囲い込まれてる?」「もしかして俺だけ内々々定!?」とか舞い上がって、訪問しちゃうわけです。
採用活動に限らず、あらゆる業務をギリギリのところで回すのではなく何かトラブルがあっても致命傷にならないよう多少のバッファを持って運用するのは、社会人の常識です。知らないのは学生さんだけです。
2. 学歴差別論争&囲い込み論争のコラボ
しかし、官庁訪問の場合、これが「学歴差別論争」「首都圏優遇論争」とコンボになって多少ややこしくなるのが困り者なのです。
つまり、このバッファ確保作業というのはあくまでバッファであって、そんなにコスト割いてやるものではないのです。
お分かりですね?
人数集めるためだったら、とりあえず霞が関のご近所の大学の学生さんに向けてこのバッファ作戦を展開するのが合理的ですよね?
もちろん、東京の学生が優秀なんて全くの幻想で、地方の大学に対してもやりたいのは山々ですし、実際地方の説明会で似たようなことやったりもするようですが、手数(=頻度)が違います。
そうすると、このバッファ作戦を受けて(主に)東京の学生が2chやらに「俺、囲い込まれたし!(どや)」とか書き込んでしまい、これでまた「学歴差別論争」が激化するのです。
3. 囲い込まれることは有効打にはなりえない
例えば、仮に、どこぞの採用担当者が2chで言及されている「私的な飲み会」を学生と開いたとしましょう。そして彼は「囲い込まれている」と思ったとしましょう。ですが、官庁訪問のパフォーマンスがしょぼかったなら、彼は落ちます。
もう一度、採用担当者の気持ちで考えてください。
あなたが採用担当者だったとして、上司(例えば人事課長)を説得できますか?
「彼は面接の受け答えはいまいちですが、飲み会ではいいやつでした、採用しましょう」
これは、職員が政治家先生に対してヘマをやった時に、上司が謝罪に行って
「先生、彼がやったことは本当に申し訳なかった、でも飲み会では面白いやつです、許してやってください、今度飲みましょう」
と言うのと同じです。大変なことになります。
疑り深い人やちょっと頭の回る人なら
「とはいえ、採用担当者の候補者リストに入っている時点で、何も持たないゼロの学生よりはアドバンテージがあるじゃない」
と思うかもしれません。
確かに、名前を覚えられやすくなる、という効果はあるかもしれません。そういう意味ではバッファ作戦の対象になることによるメリットはあるかもしれませんね。
ただ、採用活動は遊びでやってるんじゃないんです。サークルの勧誘と多少似ている側面もありますが決定的に違うのは「将来、こいつを部下にして俺らに迷惑がかからないか」という自分たちのビジネスがかかった勝負なのです。
官庁訪問は、長ければ1時間以上の面接を何回もやります。ダメな人はそこでボロが出ます、確実に。そこでつく差に比べれば、「名前覚えられている」「一緒に飲んだ」なんていうアドバンテージはすぐ吹っ飛びます。
4. 終わりに
あとはもう各省によってやってること違うでしょうし、そこから先は私にはわかりません。自分のところの採用チームが今年何をやってるのかもまず知りませんし。
省庁によって、本当にそういうことをやってたり、やってなかったり。
作戦を展開している職員のレベルが違ったり。
あるいは、ただのバッファじゃなくて、たまたま本当に、こいつめっちゃ獲りたいわ!っていう学生が出現した時に、かなり頑張ってしまったり。
あと一番厄介なのは、「ガチで囲い込んでいて、それ以外の学生はいきなり官庁訪問に来ても無駄だよ」という運用をしちゃってる省庁が無いということを、私は断言できないということです・・・・・・。無いと思ってますが。
まぁそんな閉鎖的なところに入っても面白くないですよきっと、このオープンソースの時代に。志望者は「選ぶ立場でもある」ことをお忘れなく。
基本的には言及した通り、採用の可否に何か致命的な違いを与えるようなものではないはずですし、しかも所詮2chに書き込まれているようなことなので(それにコメントしてるこのブログもどうかと思うけれども笑)、「そんなの知らない! もう自分以外の学生はあらかた囲い込まれてるのか!? もう自分の枠はない!?」とか無駄な心配をせずに、自分の準備を着々と進めるのがいいと思います。
しかしまぁ、そこまでして学生にサービスしないとやってきてくれないっていう時点で、やっぱり公務員の人気は落ちてきているんでしょうね。数少ないパイを省庁間で取り合っているという。
<おことわり>
このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。
また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。
(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たって』 H25.6.28)