現役官僚おおくぼやまとの日記

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【新人通信研修①】総理大臣訓示、事務次官講話のバックナンバーをご紹介

 こんにちは

 

 

 

今回ですが、一年生の研修がコロナの影響でどんどん無くなっていっているということで、研修のような話をご提供したいと思います。

本当はもっと早く書きたかったのですけれど。もう各省の研修は何らかの形で一通り終わってるんでしょうね。

 

 

とりあえずタイトルには①と振っておきました。他にも何か思いつけば書きます。

 

 

 

1. 総理大臣訓示バックナンバー

 

今年は合同初任研修が無くなったということで、同期が全員集まる機会が無くなったのは残念でしたね。

総理が来られ、日の丸が掲揚されて訓示をいただくのですが、私はそれで気分が盛り上がったので、無くなったのは残念だなと。

ここは、過去のものを眺めてせめてその雰囲気を味わってみてください。毎年ちょっとした時事ネタを入れてくるだけでパターンは同じ

 

リンクを貼っておきますが、3年分だけ、一部を引用してみました。

 

平成31年

 今から60年前、現在の社会保障制度へと続く、世界に冠たる、国民皆保険制度をつくったのは、旧厚生省の行政官、小山進次郎のチームでありました。しかし、全国2,500万人とも言われる人々からの保険料の徴収は至難の業でした。当時の安保闘争とあいまって、各地で、保険料の支払い拒否、座り込み、様々な反対運動が起こりました。積立金が軍需産業の育成に使われる、こうしたことも言われたそうです。あくまで納得ずくで、進めていく。説明会では、野次と怒号が飛び交う中でも、説得を重ねました。デモ隊に取り囲まれれば、その本部に出向いて、とことん話し合った。反対運動が盛り上がる中、真冬の吹雪にあっても、雪に閉ざされた集落に向かい、一軒一軒、家々を訪ね回りました。山奥の村に何度も足を運び、車のメーターは1日で500キロ、任務を終えるころには地球1周分を超え、5万キロになっていた。

 60年後まで続く社会保障制度は、歯を食いしばり、ひたすらに現場を大切にした先人たちの努力の上にある。行政の仕事とは、すべからく、1億2千万人、国民一人一人と向き合う仕事であります。当然、反対もあれば、批判も受けることもあるでしょう。そうした中で、しっかりとやるべきことをやる。どうか、困難にあっても、この国の将来を見据えながら、粘り強く政策を前に進める行政官であってほしいと思います。そして、そのことを誇りに、行政官の人生を歩んでいただきたいと思います。

https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0403kunji.html

 

平成30年

 明治の先人、民俗学を確立した柳田國男(やなぎた くにお)は、また、行政官でもありました。国家公務員としての20年、農業改革に粉骨砕身しました。
 幼い頃に自ら飢饉(ききん)を経験し、また、当時行われていた、間引きという現実を知り、衝撃を受けます。
 何ゆえに農民は貧なりや。日本を幸福にするためには、急いでこの問題を解決せねばならぬ。
 柳田は、農商務省へ進む決意をします。25歳、皆さんと同じくらいの年齢です。入省してすぐ、農村をつぶさに回り始めました。
 当時の農業政策の考え方は、少数地主と多数の小作農を前提に、技術を普及して米の生産量を増やすというものでした。しかし、農村の実情を知る柳田は、作り手不在の農業政策に異議を唱えます。
 自ら努力し、生産性を高める農家こそが農業の主役である。そのためには、小作農が経済的に自立できる土地を持つことができる構造改革こそが必要な政策だ。
 こうした考えは、当時としては、省内にも、学者にも、世間にも受け入れられませんでした。しかし、現場を知る柳田が、たじろぐことはなかった。改革は、柳田やその後に続く先輩たちの努力によって、徐々に実を結んでいくことになります。
 皆さん、現場に出て、現場の声に、じっくりと耳を傾けてください。頑張る人々の思いに接して、国民本位の政策を磨き上げてください。霞が関の中だけでつくられた、頭でっかちの理論が、世の中に受け入れられることはありません。

https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2018/0404kunji.html

 

平成29年

 その中心には皆さんたちの先輩たちがいた。未曽有の国家的な危機を前に、祖国の復興に身を尽くし、戦後を切り拓いたたくさんの公務員たちがいました。
 下村治もその一人でありました。
 終戦当時、弱冠35歳。若き行政官の前には、戦争によって産業をことごとく失い、急激なインフレに襲われた、日本経済がありました。
 その強い危機感が、彼を経済の現場へと駆り立てました。
 下村は、自らの発意で闇市の物価調査を開始しました。当時、新橋にあった闇市に、彼自身が足を運び、自ら様々な物の物価を調べていたと言います。満足な食事もとれない時代、体調は必ずしも万全ではありませんでしたが、それでも、新橋通いを続けたそうであります。
 その結果を基に、闇物価指数と名付けた独自の統計まで作成し、下村は、現場の実態を把握する努力を重ねました。
 彼の経済政策は、常にそうした現場感覚に裏打ちされていました。ですから、下村は一人の若い公務員でありながら、年上の高名な経済学者たちを相手にしても全く物おじすることはなかった。現場に根差した自らの主張を、常に、確信を持って貫いていたといいます。
 そして、そうした現場を大切にする姿勢が、日本を高度経済成長へと導く、あの所得倍増計画を生み出したのだと思います。
 皆さんも、どうか現場に足を運んでください。

https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0405kunji.html

平成28年

https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0406kunji.html

平成27年

https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0410kunji.html

平成26年

https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0402kunji.html

平成25年

https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0403kunji.html

平成24年野田総理

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11236451/www.kantei.go.jp/jp/noda/actions/201204/06koumuin.html

 

安倍総理だけ引用しているとまたいろんな物が飛んでくるので、野田総理の年まで引用しておきます。もっと昔のものもきっとあるはずなので、興味のある人は自分で探してみてください。

 

 はい、先ほどは取り消し線なんか入れて茶化してみましたが、毎年、先人のエピソードを紹介するというパターンで話してます(全部見ていただければわかりますが、行政官以外の人を紹介する年もあります)。これ、とても良いですよね。

 柳田国男を知らない人はいないと思いますが、上記の他のお二人のことは知らない人が多いんじゃないでしょうか。行政官というのは陽の目を見ることはほとんどありません。黒子に徹するのが美徳だという考え方もあります(これは賛否両論ありますが)。

 自衛官に至っては、防衛大学校創設の父である吉田茂総理が

自衛隊が国民から歓迎されチヤホヤされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡のときとか、災害派遣のときとか、国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ。言葉を換えれば、君たちが日陰者であるときのほうが、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。』

 と話しています(ちなみに、この逸話は第一回の防衛大学校卒業式の訓示として広く知られていますが、どうやらそうではなかったという説もあります)。自衛官とはかなり違いますけれども、確かに、私たちが忙しくなってる時って、大概世の中に危機が訪れている時なので似たようなことが言えてしまうのかもしれません。

 しかしながら、まさに上記の訓示でも紹介されている通り、ちゃんとやった仕事というのはちゃんと残っていきますし、世の中のためになっていきます。

 なので、いろんなことが起こるけど、目の前の仕事をしっかりとこなして一つずつ積み上げるに尽きるというのが、このメッセージなのではないかなと思います。これは行政に限ったことではないですね。

 

 

2. 事務次官講話バックナンバー

 

 

なぜか人事院HPから削除された各省事務次官級講演。

行政の偉い人が何を考えているか、ということは世の中に広く共有した方がいいと思うんですけどねぇ。公開されて困ることを喋ってる人もいないと思うし。なんで消しちゃったんだろ。

しかし便利な時代になりまして、国会図書館アーカイブされてましたので、そちらをご紹介します。

 

thanks to 

官僚たちの四季 on Twitter: "既に発見されたかもですが、こちらに。
https://t.co/9oC1AIqQti… "

日向 平兵衛酢/Hyuga_Hebesu on Twitter: "そのような時は、
国立国会図書館 インターネット資料収集保存事業
https://t.co/IrKirH8MWB
で検索をかければ、アーカイブ保存データで、ヒットすることもあります。
(参照)
https://t.co/7hJI8RcJ6w… "

 

 

次官講話

※2010〜2016しか載ってませんでした。もっと新しいものがあればどなたか是非教えてください。加筆します。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10369996/www.jinji.go.jp/kensyusyo/jikan.htm

↑↑

こちらに大量に掲載されていますので、お時間があれば是非読んでみてください。どれも読み応えがあります。

ガイダンスということで何点か引用させていただきます。新人研修ではないものも混ざってますが、まぁあまり違いはないと思います。どなたも大きな話をされてますので。

 

平成27年度初任行政研修 岡本 復興庁事務次官

 私は、官僚になった以上は、一つの分野でプロになろうと思いました。若い頃は、地方財政、特に交付税の専門家を目指しました。課長補佐のときに交付税の専門書を書きました。これは関係者の間では有名になりました。平成六年ですので、もう二十年以上前に書いたのですが、この本を超える本はまだ出ていないと思っています。

 私は地方財政の第一人者になりたかったのです。 勉強もしましたし、地方財政学会にも入りました。 ちなみに今では自治体学会に加え、日本行政学会にも入っています。東京大学に二年間、慶応大学にも二年間、教えに行きました。このほかにも講義や講 演に行っています。

 皆さんのなかでも、技術系の人あるいは院卒の方は学会に入っていると思います。一方、事務系の人や四大卒の人は、まだ自分の専門、フランチャイズが決まっていないと思いますが、そのうちに、仕事あるいは仕事外で自分の専門を持っていただきたいと思います。そして、学会の雑誌に投稿するぐらい、その分野の第一人者になってほしいのです。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10369996/www.jinji.go.jp/kensyusyo/jikan/H27okamoto.pdf

 

平成26年度初任行政研修 齋木 外務事務次官

 ただ、一つ、ぜひ頭に入れておいていただきたいのは、省益というものはありません。省益なんて言葉は、実は現実に存在するはずもないことでありま す。例えば、外務省という役所の省益、そんなものは、ないんです。財務省という役所の省益もない。 あるのは、国益、国民のための、いわば全体的な利益であって、それが各役所に、いわば割り当てられているんです。皆さんの所属する省庁を通じて国民の利益をいかにして実現していくか、それが結局国益の実現という、全体の力となっていくんだということを、ぜひ頭に入れておいていただきたい。

 霞が関も、冷房が入っていない部屋というのもだんだん少なくなってきました。我々の若いときは冷房なんてなかったですね。昼も夜も、うだるような暑さで、夏、扇風機が回っている。 うちわであおぎながら電話でいろんな案件について、霞が関の中での相談事というのを夜中までやるわけです。話をしているうちに、かっかかっかしてくる。若いうちは、自分の役所の立場で相手を説得するとい うことに相当エネルギーを使います。上司はそれを見ていて、自分では別にやらないんですけど若い人にやらせて、まあまあ冷静にとか頑張れとか言って いる。それで若い人が徹夜をして、翌日、まとめたものを上司に報告すると。もう最近はそういうことはないと思いますけども、十数年ぐらい前まではそんな感じのことが結構行われていました。

 もちろん、若い省員たちはそれぞれ、決して自分の所属している役所のためだけにそういうことをやっているわけじゃないと、心のどこか片隅に置きながらも、ただ目の前に突きつけられている問題について、省のために頑張って来いと言われると、やっぱり一生懸命やらざるを得ないという、なかなかつらいミッションを担って仕事をしていたと思います。

 私が申し上げたいのは、全体の利益、国のための利益、これが何なのかということを、必ず頭の中の大きな部分に置いて仕事をしていただきたいということであります。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10369996/www.jinji.go.jp/kensyusyo/jikan/saiki_akitaka.pdf

 

平成25年度女性管理職養成研修 村木 厚生労働事務次官

 それから、どうしても中途半端にペースダウンしなきゃいけない時期に、どうしようと悩むことが多いと思います。私は今、もう人を使う立場になりましたが、どうしよう、職場に迷惑はかけていないかしら、私はいいお母さんかしらと悩むのはやめてほしいと思っています。なぜかというと、パフォーマンスが落ちるだけで、いいことが何もないからです。 どうせ悩むなら、どうやったら短時間でいい仕事ができるかとか、どうやったら子供と一緒にいる短い時間をいいお母さんでいられるかということで悩んでほしい。私の場合は、やれるだけのことをやってだめだったらば、辞めればいいんだと思ったらすごくすっきりしたんですが、実際にだめだったということは大抵ないです。役所の場合は、大きな組織ですから、大体いろいろな形で、融通をつけて、ペースダウンしたいときには配慮ができますから、そこは無駄な悩み方をせずに、前向きに今できることをちゃんとやるということをやってほしいです。

 ただ一つだけ、そのときに貸し借りの感覚というのはやっぱり持っていてほしい。組織とか同僚との間で、今はペースダウンしていて、ここは組織に少し借りがあるなとか、そういう認識をもって、どこかで必ずその借りを返してもらいたい。今度ほかの人が、何か介護があるとか、病気だとかというとき に、少し頑張ってあげる、あるいはサポートしてあげる、声をかけてあげるということをやってほしいと思います。あとは、上手にたくさんの人のサポー トを自分に引きつけていただきたいと思います。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10369996/www.jinji.go.jp/kensyusyo/jikan/muraki_lecture.pdf

 

平成23年度3年目研修 竹歳 国土交通事務次官

 「プロになるには一万時間」、生物学者福岡伸一さんがあるコラムに書いていたことです。これは福岡さん自身の調査の結果というよりも、そういう調査があるというのを引用した話でした。どんな調査かと言うと、スポーツとか芸術とか技能とかどのような分野でも、圧倒的な力量を保持するプロフェッショナルの世界がある。その人たちに共通の時間というのがあって、バイオリンでもピアノでも、一日三時間稽古して、毎日やると三百六十五日で千時間、それを十年間続けると、これで一万時間になる。プロフェッショナルというのは、それだけの時間が要るということなのですね。(マルコム・グラッドウェルの著書、Outliers : The Story of Successで有名になった一万時間の法則)

 それを役所にも当てはまるとして計算をやってみたいと思うのですけれども、霞が関で、皆さん九時間や十時間は働いていると思います。だけれど、ピアノとかバイオリンの稽古に比べると必ずしも密度は高くないですよね。だから集中して、何かこれをやっているぞというのが、例えば六時間あったとする。そして我々は年間二百四十日しか働いていま せん。三分の一、つまり百二十日はお休みなので、 そうすると、一万時間に達するには七・五年かかる。 もし九時間一所懸命にやれば、五年で一万時間を達成する。だから皆さんの頭の中で、自分は一万時間にどれくらいで到達するかなというようなことを考えてみて欲しい。密度にもよるし、それから上司とか指導者とか、自分のモチベーションを上げるきっかけによっても全然違ってくると思うけれど、そういうのが一つの目安になる。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10369996/www.jinji.go.jp/kensyusyo/jikan/taketoshi_lecture.pdf

 

もはや若造がコメントする話ではないですね。

みなさん多岐にわたるお話をされてますので、一部だけ引用するのはためらわれました。ためになるので是非読んでみてください、本当に。

 

 

他に急いで書きたい話が発生しなければ、次回は「漫画『バンビ〜ノ!』で学ぶ係員のお作法」です。 

 

それから、同業の方が見ておられるかもしれないので、新人に読ませたいオススメの本とか面白いホームページとかあれば、リプライ飛ばしていただければそれを引用する形でまとめて記事化できますね。

 

 

 

Twitterやってます。

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質問箱もあります。匿名で質問できます。Twitterでお答えしています。

※ちょっと疲れたのでお休み中ですが、いつか答えられると思います

peing.net

 

 

<おことわり>

 このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。

 また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たって』 H25.6.28)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000235662.pdf