現役官僚おおくぼやまとの日記

※このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

【検察官定年】用語紹介[一般職] 事務次官は一般職?

検察官の定年延長議論について、よく出てくる割にあまり解説がないと思われる「一般職国家公務員」について簡単に書いておきます。

私はニッチな情報をネットの渦に供給していきますね。 論点解説記事はもう世の中に大量にありますから。

 

本件については、「一般職国家公務員」という用語が随所に出てきます。こんな感じで。

「検察官は一般職の国家公務員という位置づけで、検察庁法に書いていないことは国家公務員法の適用になる。三権分立に反するという主張は理解しがたい」

www.sankeibiz.jp

 

ネットを眺めていますと、「検察官というエリート公務員と、お茶とか汲んでる一般職の公務員の定年が同列に論じられるのはおかしい」というような意見がいくつか見られたので、そりゃ確かにそう見えるよなと思いました。言葉が悪いですねー。

 

世間でいうところの「一般職」という言葉が持つイメージ(お茶汲んでる女性、というイメージをお持ちの人はさすがにかなり減っていると思いますが)と、一般職国家公務員、というのは結構違うと思います。

しかも、試験区分としての「一般職」とも違います。ややこしいんですよ。

 

そもそも国家公務員は大きく2種類に分けられます。善良な公務員と悪徳公務員、とかではなくて(そういう分類をする人もいるかもしれませんが)、

一般職と特別職

に分けられます。(国家公務員法「第二条 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。」)

興味ある方は国家公務員法を眺めていただければ良いのですが、この第二条では特別職が限定的に列挙されて、それ以外は全部一般職です、と書いてあります。

では特別職というのはどういう人かというと、

一 内閣総理大臣

二 国務大臣

三 人事官及び検査官

四 内閣法制局長官

五 内閣官房副長官

こういうふうに、どんどん羅列されていきます。他には副大臣大臣政務官宮内庁長官、大使、裁判官、国会職員、防衛省の職員、、、詳しくはこちら↓

国家公務員法

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000120

 

聞きなれないのは例えば上記三の人事官とか検査官でしょうか。人事官というのは人事院の偉い人、検査官というのは、検察官と似てますが全然違いまして、会計検査院の偉い人です。

防衛省職員も特別職ですね。服する法令が他の省庁職員と少々異なります。

それから、政治家と公務員、という二項対立で見られがちですが、総理や大臣は国家公務員です、特別職の。(さらにややこしいことを言うので括弧でくくりましたが、(大臣などではない)国会議員が国家公務員なのか、と言うのは実は論点があるみたいです)

 

 

いずれにしましても、ここに列挙されている人以外は一般職の国家公務員ということになります。ですから、検察官は一般職です。同時に、各省庁の職員は事務次官や長官といった幹部も含めて一般職の国家公務員ということになります。(先に列挙した通り、宮内庁長官防衛省職員は特別職)

事務次官は一般職です。これだけ聞くと、は?と思うかもしれませんが、紛れもなく一般職です(国家公務員法上の)。でも、受けた試験は今でいう総合職にあたる、上級試験とか一種試験とかでしょうね。

 

 

ちなみに、ここを気にしている人はあまりいないように見えますが、「特別公務員」という言葉もあります。テレビで言及してる方がいらっしゃったようですが。

これは刑法上の言葉でして、裁判官や検察官、警察官などを言います。

刑法
(特別公務員職権濫用)
第百九十四条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=140AC0000000045#832

 

だから検察官は国家公務員法上の一般職国家公務員だけど刑法上の特別公務員ということになりますね。裁判官は特別職の国家公務員で特別公務員ですね。ややこしすぎますね。知らなくても生きるのに困らないと思います。

 

 

なお、一応書いておくと、

一般職だから全部同じ取り扱いでいいのか、というと必ずしもそうではないです。現に、その国家公務員法の附則に

十三条 一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない。

と書いてある通り、特殊性を持つ職員には法律を作って特例的扱いが許されます。

 

 

 

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<おことわり>

 このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。

 また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たって』 H25.6.28)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000235662.pdf