現役官僚おおくぼやまとの日記

※このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

官庁訪問を振り返る (4) 自分をプレゼンするための戦略を持つべし

 

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だいぶ時間があいちゃいましたが、このシリーズの最終回です。

 

これまでも書いていますが、 

官庁訪問をどう突破するかの裏情報教えます」などというものではなく、 

私がこの夏の官庁訪問で面接させていただいた方に対してその場で色々とフィードバックした内容についてブログ化しています。

 

 

 

 

0. 今回の記事の前提条件

 

 ・国家総合職として霞ヶ関の官庁で働きたいと思う意思が固まっている。

 

 という読者を念頭に置いています。

 基本的に私は、質問箱等でも、職業選択について考え中ですという人に対してのメッセージが多いのですが、このシリーズの最後でもありますので、意思が固まっている人に対する現実的な話をしようと思います。

 

 

1. 官庁訪問は自分をアピールする場である

 

 自明だと思っていたのでこれまであんまり言っていなかったのですが、就職活動ですから、自分を売り込んでいかないといけません。最終的には、限られた採用プールに入らなければいけませんから、戦いでもあります。

 

 戦いには、必ず、戦略が必要です。

 

 ですから、自分をアピールするのも戦略的にやらないといけない。

 

 多分、官庁訪問ではわかりやすく「自己アピールしてください」と言われることが少ないからというのもあるかもしれませんが、選抜されていくわけですから、そこは悔いがないように自分をアピールしていかないとけない。

 

 この夏、私の面接は、何か評価をせよという役割を負っていたことはほとんどなく、むしろ相談に乗ってやってくれ、という感じだったので、私に対してグイグイとアピールしなかったのは別に良かったのですが笑、面接した人の何人かは、「アピールの仕方」みたいなことをちゃんと考えていなかったようなので、以下記事にするようなことをフィードバックしましたので、皆さんにも共有します。

 

 

2. 相手(採用担当者)に「自分を採るべき理由」を持たせる

 

 学生さんはこれをわからずに就活に突入してしまうのですが、これは就活に限らず、社会ではツボです。

 

 例えば、何か商品やプロジェクトを他社に売り込みに行く時、その件について決定権を持つ者がいきなり交渉の場に出てくることはまずありません

 まずは窓口となる実務担当者が出てきます。その人に対してプレゼンを行い、「この商品は良さそうだから、上司(決定権者)に相談しよう(上げよう)」と思わせるのが、まず最初のハードルです。

 次はその担当者が上司に上げる際に、上司に色々と説明しなければいけませんから、「この商品を買うべき理由」を供給する必要があります。なので、何回も足を運んで、この商品の売りポイントを説明していきます。

 その次は、担当者が決定権者に上げてOKが出て、商談成立、ということになるときもあれば、実際にその先方の決定権者の前でプレゼンをさせてもらって、最終決定、というパターンもあるでしょう。

 

 これは就活も全く一緒ですね?

 

 まず自分をアピールして、彼は上の判断をあおいでも良さそうだ、と採用担当者に思わせる。そして、採用担当者が上司に対して、「彼を採った方が良い理由」があると考えるので是非会ってみてご判断ください、とプレゼンする。採用の場合は、多くの場合、人事部長といった人が出てきて、最終面接、ということになりますね。

 

 ちなみに、これは、人数が少ないベンチャー等で社長が全員見る、みたいな所には当てはまりませんので、念のため。

 

 

 こういった基本ルールは、学生の時は意外とわからないのですね。(バイトとかインターンとかやって、知らず知らずのうちに身につけている人もいます。)

 なので、目の前の採用の実務担当者に対し、例えば「熱意」みたいなの一本槍で勝負してしまったりします。熱意は大事なのですが、それだけでは上司へのプレゼンの武器としては、弱い。弱いというか、説明に困る。

 「彼は熱意だけはあります」

 「どれぐらいだ」

 「うーん、たくさんです」

 すごく使えない部下だと思われてしまいそうですね。

 こういうことを書くと「熱意はいらないということでしょうか」という質問がまたくるのですが、そういうことを言っているわけではありません。

 ただ、目の前にいる採用担当者が後日上司に自分のことを説明するときに、「彼は熱意だけはあります」だけでやってもらうという戦略で良いですか?ということです。

 

 これを踏まえ、採用担当者が自分のことを上司に説明しているシーンを想像して、どういうストーリーで自分を説明させるのか、というのを想定して、自分の見せ方を考えるのが大事です。

 これは、世に出ると当たり前の話なのですが、なぜか就活ではこういう話をあまり聞かない気がします。書いちゃいけないのかなぁ、リアルすぎるから。

 

 

3. 相手のニーズは何か

 

 まず、敵を知ることが大事です。

 

 最近の就活では「業界研究」とか「企業研究」とか言われていますが、それは大事なんだけど、足らない。

 就職したいのなら、分析の最終目標は「その会社はどういう人間を欲しているのかの分析」これに尽きます。なんせ、この戦いのゴールは「その会社に入る」ことですから。

 「その会社に入ることがゴールだ」というのは、これだけ見ると超矮小化されたフレーズで、普段は私はこんなこと絶対言いませんが、仮に「この会社(役所でもいいです)めっちゃ入りたい!」と思えるところに出会えたら、それはもう全力で、そこに入る戦略を練るべきです。理想論だけ語って局地戦で敗北を繰り返すのは本末転倒です。斜に構えずに、どうやったら入れるかを、考えるべき。

 ね? なんかいつもとトーン違いますでしょ?笑

 

 じゃあ、省庁はどういう人を欲しているの?ということになるのだと思いますが、これは省庁によってちょっとずつ違ってくるので、ここを頑張って探し当ててください、というのが、志望者の最も大きな宿題なのだと思います。

 これは説明会で探し当てるでもいいですし、パンフレットを読み込むでもいいです(ちなみに、パンフレットの情報量はかなりのものです。読んでない人多いけど)。説明会は地方では少ないから不利だ!と思う人もいるかもしれませんが、そんなことは採用担当は重々承知しています。これは次の項目でも出てきますが、それも踏まえた上で戦略を練りましょう。乗る土俵を考えるべしということです。

 

 しかしこれだけだとおざなりな記事になるので、これはさすがに全省庁共通するだろうというのを挙げておくとこんな感じかなと

 

 ・組織のミッションに共感できている

  その役所が守らないといけない国益は何か、ということです。

  ここに共感できている人でないと、入ってからもうまくいかない感じがあるので、これは大事かなと。

 

  ちなみに、また別の機会にしようかと思っているのですが、例の「財務省の再生」プロジェクトの中間報告書では職員からのアンケートとして

 

 「民間だと、企業の使命や行動指針があるが、財務省の場合、設置法や政策評価の目標しかなく、理念や価値観が共有されているか分かりにくい。」

 

 という回答があったようです。

https://www.mof.go.jp/about_mof/saisei/20181019_houkoku.pdf

 

 財務省に限らず、省庁のミッションというのは、わかりづらいといえばわかりづらいです。なんせ、多くの価値観を相手にするので、わかりやすくこれが最終目標だ!とはなかなか言いづらいし、見えづらいかもしれない。

 ただ、やはり確実に、その組織が向いている方向性はあるわけです。まずそれを押さえること。

 

 個人的には、今年の財務省の採用活動で、財務省の採用担当者は学生に対し、自分たちの理念や価値観をどうプレゼンするのかな、ということについては興味があります。説明会とかで話を聞いたら教えてください笑

 

 ・辛い仕事でも頑張れそう

  やはり、しんどいことが多いので。これは前項の「ミッションに共感」と完全に分離はできないかもしれませんが。辛くても、信念があれば頑張れるかもしれないし。

 

4. 自分のことを説明するストーリーを考える

 

 相手のニーズを自分なりに分析した上で、そのニーズに自分が合致する人間に映るように、自分の特徴をはめ込んでプレゼンのストーリーラインを考えていきます。

 

 例えば、相手の組織は「民間の経済活力の向上」が使命だ、と分析したとすると、まずなぜ自分は民間の経済活力の工場が大事だと考えるに至ったか、を話さないといけませんね。それは過去の何かしらの体験なのだと思いますが。

 

 その上で、その体験とか自分の属性が、あまりありふれていないものだと、大量の志望者プールからピックアップする理由になりやすい。「その人を選択する理由」として強いものになります。

 

 逆にいうと、ありふれたものだと、理由としては弱い。

 例えばさっきも例に出した「熱意がある」みたいなやつです。熱意がある人なんて山ほどいるので、熱意を持ったやつアピールする、という戦略はレッドオーシャンになりがちです

 

 「東大生です」も、レッドオーシャンです。たくさん来るから。

 

 「地方からきました」は、ブルーオーシャンの属性です。

 「地方にいるのですが、まだ民間の伸び代がたくさんあります、例えばこんなことがありまして、だからここでこういう仕事したい。」というストーリーにすれば良い

 

 こういう書き方をすると、じゃあ東大生の方が不利ということになるけど、実態はそんなことはないじゃないか、ということになるのですが、これはあくまで、特定の一つの属性を見たときの話です。実際、「東大生です」だけのストーリーで乗り込んで来る人はほとんどいませんから。

 

 学歴が不安な人については、「学歴属性」で戦うのはよろしくないので、他の属性で自分が戦える材料を探そう・作ろう、というのが戦略的な思考です。

 

 お伝えしたいのは、自分が持っている武器というのはすぐには持ち替えられないので、それを最大限生かしたプレゼンを作るべき、ということです。

 

 そして、相手の立場(採用担当者)に立って考えること。これがほんと重要。

 小学校から国語とか道徳で「相手の気持ちになって考えましょう」とひたすらやっているはずなのに、なぜか就職活動だと、相手のことを忘れて自己分析に終始する人が増えてしまうのですね。

 相手から見たときに、数百人いる志望者プールの中で、自分はどう見えるのかというのを客観的に考えなくてはいけません。

 

 

 

5. 採用担当者、面接官に、自分のストーリーを渡す

 

 官庁訪問でいきなり採用の決定権者に会うことはありません。

  省庁によってやり方は異なりますが、人事課の職員に面接したり、原課の職員と会ったり、色々会うわけですけれども、とにかく、常在戦場だと思ってやった方がいいです。実際はそうじゃなかったとしても、そうしないと悔いが残る。

 これは官庁訪問に限った話ではなく、普通の就活でもそうですからね。

 

 会う人すべてに対して「彼を採るべき理由がある」と思わせていくゲームです。あるいは「自分だけでは判断できないから、もう少し職員を会わせて判断材料を増やした方がいい」ぐらいでも良い。

 

 面接は生き物ですから、アピールの仕方はケースバイケースでしょう。いきなり、自己アピールしてくれ、と言われることもあれば、一見全然関係ないように見える議論の中に、自分のアピールポイントを落とし込む必要があることもあるかもしれません。そこは勝負です。

 

 その中で、今まで練りに練った、自分のことを説明するストーリー・自分を採るべき理由を、相手に渡していく。そういうゲームです。

 

 

 多分、当たり前だと思う人もたくさんいる内容ですが、そういうこと考えたことあまりなかったな、という人も実はいるようなので、書いておきました。

 

 

 ではでは

 

 

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<おことわり>

 このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。

 また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たって』 H25.6.28)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000235662.pdf