国会答弁の作り方2.5 -最終回直前Q&A-
私の想像以上に多くの方にご笑覧いただいている「国会答弁の作り方シリーズ」なのですが、
最終回に向かう前に
はてブにて、いくつかご疑問やご感想を頂いておりまして、
私の性格として、それを放ったらかしにしたまんま先に進むのがどうも気持ち悪かったので、早く終わらせろという雰囲気を感じる中ではありますが笑、まずそれを消化してから最終回に向かおうと思います。
(あとは、質問に答える形式は、0から書くのと比べてサクサク書けて、時間かからないという裏事情もあったりします笑)
参照しているのは下記のはてブページです。
本文読んでません、という方は、下記リンクからジャンプして頂ければ幸いです。
やり方は下記の記事と同様で、はてブについたコメントのリンクを引用させていただきました。
kasumigasekipeople.hatenablog.com
1.ご質問編
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
事情を把握して悪用できる国会議員なら、あいまい質問、意味不明質問を繰り出して国会を紛糾させることができるってこと(´・ω・`)?
2018/04/01 09:13
理論上は可能だと思います。
極端な話、通告を全くせずに、本番で質問しまくって、「そんなことも答えられないのか!」とやればいいわけですから。
繰り返しますが、質問通告というのはあくまで慣例であって、やらないとペナルティがあるようなルールではありません。慣例に従うとしても、最低限の通告、例えば「防衛政策について聞きます」ぐらいの通告をしておいて、本番では装備品一つ一つの性能みたいな細かい質問ばかりしまくって暴れまわってもいいわけです。
ただし、実際にはそのような戦略を取る人はあまりいません。ちゃんと議論しようぜ、という人が大半なので、そんなことやったら周りの信頼を失ってしまうわけです。
さらに言えば究極的には、皆さんが国会中継を見ているから(見られるから)です。
あまりに国会論戦を乱すような行為を続けると、有権者であるみなさんの目に止まって、あの議員は国をよくするつもりがないな、ということになってしまうわけです。
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
不思議なのだが、17:00って公務員は終業時刻なのでは…?公務員も週40時間労働でそれ以上はダメ ってやった方がいいと思う
2018/04/01 09:46
勤務時間についてはいろんなパターンがあるのですが、9:30〜18:15という人が一番多いと思います。終業時刻で帰れたら奇跡ですけれども。あと、国会は8:50から始まるので、まぁその辺はお察しください。
さて、公務員の労働時間なのですが、これ、意外と難しい話でして、
まず、「国家急務の事態ではそんなこと言ってられん」ということはおわかりいただけると思います。例えば大規模災害が発生し各省庁で緊急の対応をしなければいけない事態において、終業時刻になったから帰りますと言ってみんな帰ってしまうと困るわけですね。そういう時こそ公務員の頑張りどころということになるわけで、燃えます。
そんな極端なこと言われてもさぁ、と思われるかもしれませんが、では、「何が国家急務の案件なのかって、どう決めるんでしょうか」。これ、難しいです。
[急務] 急いでやらないといけない任務のこと
災害対応は急務である
補正予算の早期成立は急務である
政権の目玉政策である法案成立は急務である
政治とカネの追求は急務である
これ、どこかに線引けるかというとなかなか難しいのです。
結局、「国にとって大事なことのためには骨身を惜しんで頑張ります」というのが超基本路線ではあるのですが、「国にとって大事なこと」に絶対的な基準はなく、「国にとって大事だと思われること」は大体いつも存在するため、業務時間はなかなか短くならないというのが根底にある構造なんじゃないかなと、ふと思うのです。
それは政治家の方々にも言えることだと思います。未明まで採決とかやってるのは、その時は、その採決が「国にとって大事だと思われている」わけですね。
ただ、そんなことばかり言っていると体壊しますので、ルールを決めて運用していく、そのバランスがすごく難しいなと思います。
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
っていうか、レクの状況をニコ動で生中継して、結果報告を大臣通さずにアップロードするようにしたら、働き方改革できて良いんじゃね?
2018/04/01 11:50
面白いご意見だと感じました。今風で、とても興味深いですね。
どのような結果が生まれるかは質問者の戦略次第だと思います。
「官僚と円滑なコミュニケーションを取っていることを有権者に見せることで、更なる支持を得られる」と考える質問者がいれば、我々の働き方改革になるでしょう。
逆に、「官僚をいじめることが有権者から人気を得る手段になる」と考える質問者がいれば、その場合は我々の働き方改革からは逆行するでしょう笑。
私の主観ですが、両方いらっしゃると思いますし情勢によっても変わりそうですね。今だったらやっぱり、官僚いじめたほうが人気取れそうな気がします。その質問者の支持層次第ということもあるかもしれません。
あるいは、問取りレクをぜひ多くの人に見て欲しいという質問者もいれば、あまり見られたくないなぁという質問者もいると思います。
これ、長くなりそうなんでこの辺にしときますが、政府部内のやり取りをどこまで公開するか、というのは結構面白い議論だと思います。
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
捨ててるんじゃないの?「ですから、何が論点化していて、それについてはこの意見とこの意見があって、それぞれの根拠は何で、、、といった情報はすでに大量に蓄積されています。」
2018/04/01 13:35
最初このコメントを見たときにはよくわからなかったのですが、きっと森友のことを連想頂いているのですね(ですよね?)。
ややこしい話になりそうなのですが、、、
私、最近はもう力尽きて森友問題のことはあまりフォローしていないのですが、
私がこの記事を書くときに、は法案とか予算案とかそのようなものを念頭に置いていました。法案であれば、例えば、審議会を開催して何回も議論を行います。その議事録は基本的に公開されますので、破棄はできないわけです。それらの議事録等も参照しながら、想定問答を作っていきます。
実際、森友でも、売却判断の際には、地方部局の方で審議会のようなものが開催されていたようですが、その会議録は公表されているはずで、破棄はできないはずです。
今回、森友学園の問題で、破棄したかどうかというのは、例えば、面会録ですとかそういうものだと認識しています。森友学園の問題においても、実に様々な情報が絡んでいるわけです。全部が捨て去られたわけではないはずです。
それらの一部である、面会録等、が破棄されたされないの議論があって、その資料が非常に重要な意味合いを持っていたから、色々紛糾しているものだと認識しています。
なお、その一部であるところの面会録の保存期間が適切だったのか、というのはこれまた別の議論でして、仮に法令に則って処理していた場合でも、じゃあ法令がおかしいから改正しようね、という話をすべきなので、そこは是非、改善が見られればと思います。
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
- [政治]
ロジの部分、Redmine等のITSシステム化出来ないかとちょっと思ったが、複雑すぎてフローに落とせないかもなぁ。暫定的な一次割り当て位はAI導入出来るか?
2018/04/01 16:17
れ・・・Redmine・・・。あー、Redmineねー、あれすごいよねー。。。
無知につき、知りませんでした。が、色々検索しまして何となくわかりました。
システム化は個人的にはものすごく興味があります。
ご懸念の通り、かなり複雑かつ有機的な情報伝達の連鎖で成り立っている事務フローですので、我々一人一人に専門家の方が張り付いて頂いて、まず何が起こっているのかを分解していただく必要があるのではと思います。
一方で、いっそのことゼロベースで事務フローを組み直したほうが良い気もしますし、その辺りは判断しかねます。
まぁなんとなくですが、いくらでも組めそうな気がします。
ただ、一発目から完璧なものができるわけではなく、改良を繰り返していかないといけないのだと思うのですが、途中では「これだったら今までのやり方でやるほうが早いわ」というフラストレーションがかなり溜まるフェーズがあると思うので、全職員の理解を得るのが結構大変かな、というのが、中の人間のリアルな感想だったりします。
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
通告って文書でしてるんじゃないのね。勉強になった
2018/04/01 18:00
これは、完全に、私の文章が長すぎて読みづらいせいです。すみません。
基本的には文書で通告されます。
ただ、たまに、
-文書なし
-文書自体はあるが、ほとんど情報がないので実質文書なしに近い
というパターンがあり、さらにそれぞれにおいて
-問取りレクあり
-問取りレクなし
の分岐がありますので、とにかく色々なパターンがあります。
更に言えば、文書はいただいているものの、レクでの議論を踏まえて質問が変わるとかもありますので、それを「文書で通告がきている」と言えるのかはまた微妙だったりもします。。
いろいろ書きましたが、多くの場合文書は頂けると考えて頂いて良いと思います。
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
次の日の国会の委員会で質疑がスムースに行われるのもこうした前夜の霞が関の作業のたまものなわけだが、うっかりとして互いに相手の省が答えるものと思って答弁が作成されなかったというような例はないのかな?
2018/04/03 14:08
ご質問ありがとうございます。
記事内では、登場人物を増やすとややこしくなるなと思って省いたのですが、国会答弁の全体を差配している内閣総務官室という部署がありまして、そこが各省に割り振りますので、「お互いがお見合いをする」のは少なくとも私は見たことがないですね。
それから、そもそも、各委員会は基本的に省庁と一対一対応しています。文部科学委員会なら文部科学省の所掌事項について議論、という感じですね。
複数の省庁が絡むことって、全体の数から見るとそんなに無いんですよ。予算委員会ぐらいですから。そういうこともあり、ご懸念の事態はまず起こらないです。
2.ご意見編
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
この辺は橋本行革の弊害だろうな。役人に答弁させてれば必要の無かった作業が膨大に生まれた感じ。特に担当大臣が無知だとアドリブも効かないだろうし、それくらい知っとけよ!て事まで台本に入れなきゃダメそうで…
2018/03/31 23:14
橋本行革の評価についてはもう少し調べてみないとなんともコメントできないのですが、おっしゃる通り「政治家と役人との役割分担」を効率的に行えているか、というのは、ちゃんと評価検証すべきだと思います。
基本的には「役人は悪人なので信用ならん」という思想が蔓延してしまっている世の中ですので「政治主導」というのがよく言われるのですが、最終的に決定するのは政治家だというのは、これ、わざわざ主張するまでもなく、現下の統治機構の設計を見れば明らかなんですね。なので、お互いがお互いの長所を発揮できるシステムを作るということがとても大事だと思います。
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
お役人もブラックな環境、というか無茶振り含めて振り回されすぎで大変だな。もうちょい余裕持たせたスケジュールに出来ないんだろうか。
2018/04/01 01:42
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
例えば委員会は日程決定日の5営業日以上先にしか設定できないとすれば、議員も役所も全て余裕ができる。"働き方改革"って本当はそういうことだと思うよ
2018/04/01 09:20
そうなんですねぇ。なんとなくおわかりいただけたかと思うのですが、「スケジュールがギリギリ」ということがもたらす非効率さがあるんですよね。ワリモメしながらとりあえず書くとか。結果的に自分の担当にならなければその作業は無意味になるわけですから。
ただ、「日程闘争こそ政治である」という部分もありまして、実際、話題の森友問題でも、明日委員会をやるかやらないか、というところで戦いが繰り広げられたりしてましたので、そこは少なくとも我々行政官にはなんともできないところではあります。我々は、我々のできる範囲で、まずは努力していくということだと思います。
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
要するに議員が馬鹿だからが原因ジャン。自民盗議員はこれだけ答弁で負担をかけておきさらに法案作成で自分に利権が転がり込むよう役人を怒鳴りつけるわけだろ。役人もそういう我儘議員の言いなりだから舐められる。
2018/04/01 09:38
複数の論点が含まれている実に示唆に富むご意見だと思います。
全部やるとまた私の悪い癖でどんどん長くなりますので、簡単なコメントに留めたいと思います。
>要するに議員が馬鹿だから
議員(この場合は政務三役のことを指していると思います)が所掌領域にもっと詳しければ、官僚が苦労して答弁を作成する必要はないだろう、ということだと思います。
理想的にはそうだと思いますが、一人のヒトに、膨大な所管業界の全てを知っていることを求めるのはちょっと厳しいかなぁという気はします。ただ、これは続編で書くと思いますが、官僚が書きすぎてしまっているという要素は確かにありそうです。
政務三役がどのように決まるのか、というテーマで何か書けそうですが、それは結構後回しになると思います笑
>役人もそういう我儘議員の言いなりだから舐められる
これは、また別のシリーズを立ち上げて皆さんと一緒に考えたいぐらいの論点です。
個別具体的には本当に色々なケースがあるのだと思いますが、例えば、
政治家「こうしろ」
官僚「いやー、それはちょっと・・・」
政治家「じゃあこの法案は通さない」
ということがあり得ます。立法は国会の仕事ですので。じゃーそんなもん通さなくていいじゃねーか、ということになりそうなのですが、その法案で他の何百万人もの人が助かるのに、その人のワガママに屈せず、「じゃあ法案は取り下げる!」と言うことが果たして正義なのか、という難しい議論が待っています。
これはかなり極論ですけどねー。でも、理詰めで考えていくと、そういう限界事例は発生しうるわけです。制度を考える上では限界事例を考えることが非常に重要です。
国会答弁の作り方1 〜大人も子供も、議員さんも〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
中高生にもわかる、だけぢゃなくて、中高生の頭にも一度で入る、を期待するのはむずかしいかしら^^;
2018/04/01 14:30
いやー、ほんとすみません、わかりづらくて。。
読者層をどのあたりに設定するのかというのがまだ掴めてませんでして。。。
中高生向け、小学生向けの、政治・行政の仕組みとか、余裕ができたら書いてみたいですね。子どもへの情報提供ってものすごく興味あります。
これ、完全に私見なんですけど、教科書って、変な言い方になりますけど、ある意味では、子供を過小評価してると思うんですよね。 子供ってそんなに頭良くないし、まぁこの程度だろと。彼ら、好奇心ありますし、丁寧に説明すればかなりのところまでわかってもらえると思うんですよね。ただ、学校で丁寧に説明し始めるとめちゃくちゃ時間かかるので、あっさりやらないといけないのはわかるんです。だから、それを補完する何かがあればなぁとは思います。
あと、twitterのフォロワーさんとかを見る限り、お子さんがいらっしゃる親御さん世代も結構ご覧頂いているみたいなので、わかりやすい記事をご提供できれば、それは結構価値あるのかなとか。
なので、そういうのは是非やってみたいです。
「小学校の生き物係のおしごとで学ぶ、行政のしくみ」とかそんなノリですかね。
まぁ、時間があれば。。。(どんどん宿題たまっていくな)
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
数字を教えろ系は、事前に把握している数字を議事録に載せる為に質問してると思ってたけど、通告のタイミングで調べさせて答弁で知るパターンもあるのね。それ意味あるのか…
2018/04/01 20:58
あまりないですけどねー、たまにあります。
あと、質問者が、我々が持っていない数字をベースに質問されてくるときとかですかね。そもそも、その数字が本当に正しいのかは確認したいですし。
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
ディベートの試合準備に似てるなー。通告みたいのは無いけど、想定される反論用に反駁カードを作っておく作業とか。それを省庁間で連携しながら一晩でやるとかどんだけハードなんだよ。
2018/04/01 22:31
おっしゃる通り、結構似てますね。
一つ違う点があるとすれば、競技ディベートは勝負事なので、自分の考えとは独立にとにかく相手に勝つ、ということになりがちなのですが、
国会論戦はあくまで、良いものをつくるのが目的なので、良い指摘があればそれを受け入れて法案を修正していくことができる、ということかもしれませんね。
多少の違いがあるにせよ、ディベートの経験は非常に役に立つ世界だと思います。
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
公文書を改竄するとこの仕事全てが無駄になってしまうんだなー
2018/04/01 23:26
そうなんですよねぇ。
これらの作業が「信用できない」という言葉一つで全部吹っ飛ぶわけですからね。
早く真相が明らかになって、信頼回復に努められればと思います。
国会答弁の作り方2 〜論理的思考と反射神経の二重奏〜 - 若手キャリア官僚は今こんなことを考えています
- [政治]
行政権力はこういう地味な作業によって支えられている/「自分が書いた答弁のせいで論戦が紛糾したらそりゃもう冷や汗もんです。」w
2018/04/02 04:30
いやほんと、一回経験してみてください笑
超焦りますから。
上司のチェックも入ってますし、答弁者本人が納得した上で喋ってるわけですから、自分一人が悪いということは絶対ないのですけど、やっぱり焦りますね。大臣、、、なんかごめんなさい、みたいな。
こんな感じです。
少しはお役に立てましたでしょうか。
不明点はお気軽にどうぞ。レスポンスがあったほうがニーズに沿ったものがご提供できると思います。全部にお応えするのは厳しいんですけど。。。
むしろ、疑問が余計大きくなったわ!みたいなことになってるかもしれませんが笑、とりあえずこんなところにして、次はメインストーリーに戻りまして、答弁を完了させたいと思います。
ではでは
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