<2017年国会を振り返る> その1 〜森友・国有地問題〜
よく、ブログで
なかなか更新できずすみません!
とか、Facebookで
報告が遅くなって申し訳ありませんが、わたくし実は・・・
とか見ますが、別にこっちは全然気にしてないし更新できずすみませんって言いたいだけじゃないの、って思うのは私だけでしょうか笑
年度末・年度始めは多少繁忙期だったため間隔が空いてしまいましたが、GWに突入して一応カレンダー通りの休みはもらえて多少時間があるので、ブログを更新したいなと思いまして。(なお他省の同期の中には、復興大臣の失言事件で国会日程が全体的にひっくり返り、GW中も出勤しないといけなくなった人がいるみたいです・・・)
何を書くかですが、まだ閉会していないものの、既に色々あった今年の国会の代表的なトピックを振り返ってみようかなと。案外、自分の仕事以外の話題って詳しく追えていないので、その勉強も兼ねてまとめてみたいと思います。なおタイトルは、正しくは第193回国会、ですが、普通の人は193回とか言われてもいつのことやらさっぱりわからないと思ったので2017年国会としてみました。
初回は、ニュース番組の枠を超えてワイドショーでもだいぶ話題になった森友学園・国有地問題について勉強したいと思います。
なお、どうも官庁訪問ネタが人気があるようで、少し目を離している隙にほとんどのビューが官庁訪問系に集中している模様。まぁそちらの方はまた気が向いたら書きます。
今は一次試験が終わってその発表待ちの期間なんですね。だからやることなくなってビューが急に増えたのかな。気を抜かず二次試験対策も頑張ってくださいね。あと書いてほしいことがあったら2chに書き込んどいてください笑 多分またそれ見て書くので。
1. 論点洗い出し
森友学園 まとめ
といったキーワードで検索しても何が論点なのかいまいちよくわからないので、洗い出してみた。
また、中身の議論においては敬体が非常にまどろっこしいので常体で記載した。
1-1. お値引きしすぎではないか=廃棄物除去費用算出根拠不透明、問題
森友学園への当該国有地売却額・・・1億3400万円
その隣にある似たような国有地の売却額・・・14億2300万円
お隣の国有地に比して森友学園への売却額が安く見える理由として財務省は下記のように説明(下線は筆者)
一方、森友学園に対する土地の売却でございますが、これも、更地の不動産鑑定価格九億五千六百万円から、その時点で借地契約中に見つかりました新たな埋設物がございまして、その埋設物を撤去する費用をきちんと見積もりまして、その撤去費用を差し引いた、まさに土地の時価でもって売却したものでございまして、そういう意味では、不動産鑑定価格に基づいた時価で売却しているという意味では、豊中についても森友学園も同様でございます。
(2月15日 衆・財金 財務省 佐川理財局長)
しかしその除去費用について、
・まず、地下「3m」までの埋蔵物除去費用が1億3176万円(これは売買契約前に既に支払い済)
・その後それより深いところに新たに埋蔵物が発見された。基礎杭(深く打ち込まないといけない)を打つ部分を除くと新たに地下「3.8m」までは埋蔵物を除去しないといけない。
・新たな撤去費用は8億1900万円だった
これらの情報から算数すると、深さ3mのゴミ撤去が「1.3億円」で、追加的な80cmのゴミ撤去が「8.2億円」、これは不自然ではないか?という問題。
これに対する行政サイドの回答は
(略)内容が異なるため、一概には比較できないものと考えております。
ただ、いずれにいたしましても、工事積算基準等に基づき、適正な算定を行ってございます。
(国交省 平垣内航空局次長)
撤去費用につきましては、国土交通省におきまして、工事積算基準に基づき適正に算定されたものでございます。
(財務省 佐川理財局長)
(参考) 2月15日 衆・財金 共・宮本(岳)委員の質疑
1-2. そもそもなぜ売却価格が非公表だったのか、問題
・2月9日に朝日新聞が本件について初めて報道したことを受けて、財務省が2月10日に、それまで非公表だった当該国有地の売却額について、1億3400万円であったことを公表。
・それまで非公表にしていた理由は(下線は筆者)
国有地を学校用地などの公的用等のために売却した場合、原則公表としてございますが、不開示情報に当たる場合については、相手方が公表に同意しない場合は公表しないことが適当であると考えてございます。
本件でございますが、当初、相手方より、契約金額を公表することで地下埋設物について広く周知され、風評リスクが生じかねないということから、契約金額を公表しないようにという要請があったことから、非公表としていたものでございますが、その後、報道を受けまして、国有地を不当に安く取得した等の誤解を受けるおそれがあると考え、契約金額の公表に同意すると先方が合意したものですから、公表したことでございます。
(2月22日 衆・財金 財務省 佐川理財局長)
1-3. 国有財産審議会及び大阪府私学審議会における手続きの順序の問題
非常に簡略化すると、
A=財務省近畿財務局が森友学園に対して、将来的に売る前提で国有地を貸し付ける
B=大阪府私学審議会が森友学園に対して、小学校設立を認可する
とした時に
「AするためにはBされていないといけない」一方で「BするためにはAされていないといけない」という関係になっている。
どちらかが見切り発車した?あるいは正式な決定前に「内定」のようなものを出していた?という問題
[2014/10/31]私学審議会に許可申請書提出
[2015/1/27]私学審議会 認可適当の答申
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/5807/00178564/270127toshin.pdf
[2015/2/10]国有財産近畿地方審議会
私学審議会の答申を受けて、貸し付けスキームで進めることを了承
http://kinki.mof.go.jp/content/000115032.pdf
-----ここまでが行政内部の手続きの問題-----
-----ここからが政治と行政(政と官)の問題-----
1-4. 政治家が圧力をかけたのではないか、忖度があったのではないか問題
安倍昭恵 総理夫人が、当初、当該小学校の名誉校長として名を連ねていたり、そもそも小学校の名前に「安倍晋三記念小学校」として名を使われていたりして、安倍夫妻が当該小学校の設立に多大な尽力をしていたのでは?という疑惑発生。
ここから、関係省庁に対して圧力をかけていたのではないか、さらには直接何かを指示することはなくても、「その小学校設立に関係している」というだけで、無言のプレッシャーをかけた結果になっていたのではないか=官僚が忖度する土壌があったのではないか、という問題
これ大阪の財務局の立場でいえば、安倍昭恵夫人が名誉校長に就任している小学校を、手続ができないからといって先送りなんかして開校を延長したら、それは昭恵夫人に恥かかせたのか、安倍総理に恥をかかせたのか、近畿財務局だって財務省だってそんたくするでしょう、それは。私的か公人かなんて関係ないんですよ、私人か公人かなんて。そういう状況を、これだけの許認可とこれだけの補助金が下りている状況の中で名誉校長に就任された。
(3月6日 参・予算 民・福山委員)
1-5. 内閣総理大臣夫人秘書と公務との関係問題
平成27年9月5日に安倍昭恵夫人が塚本学園で講演をした際、秘書が同行していた。私人としての活動だったはずなのに、秘書が同行するのはおかしい、これは公人として行った公務としての講演ということになるのではないか、という問題。
二十七年九月五日、塚本学園で安倍昭恵夫人が講演をした、しかも名誉校長を引き受けたというところに、政府の職員も同行していたということが明らかになりました。
全く私的な行為ということは、なかなかこれは、私的なもの、公的なものの判別は難しいと思いますけれども、ただ、外形的には、やはりそうした公務員を伴って行っているということは事実でありますから、これが完全に私的な行為ということを言うのはなかなか難しいのではないかと思います。
(3月3日 衆・国交 民・玉木委員)
-----ここまでが政治と行政(政と官)の問題-----
-----ここからが学校教育法の問題-----
1-6. 森友学園の教育は教育基本法に抵触しないのか、問題
森友学園が運営する幼稚園で、園児が政治的な内容を含む選手宣誓を行ったり、「安倍首相頑張れ」といった声を上げていた、との報道がある一方で、
一昨日の夕方、テレビ朝日のスーパーJチャンネルで衝撃的な映像が流されました。森友学園の幼稚園の運動会で、幼稚園児の選手宣誓の動画が流されました。ちっちゃな子供たちがこう言っています。大人の人たちは、日本が他の国に負けぬよう、尖閣列島、竹島、北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心を改め、歴史でうそを教えないようお願いいたします、安倍首相頑張れ、安倍首相頑張れ、安保法制国会通過、よかったです。
(2月27日 衆・予算 民・福島委員)
教育基本法は学校に対し、特定の政党を支持・またはこれに反対するための政治教育をしてはならない旨を定めている。
(教育基本法)
これは大丈夫なのか?という問題。
ただし、実際の報道・議論では、「なんか異様な光景だね」といった印象論が先行し、教育基本法上どうなのか、といった議論はあまりなされていなかった印象。
-----ここまでが学校教育法の問題-----
その他色々話題になっているものの、全部扱っているとキリがないし、ワイドショーのネタのような話も多そうなので、この辺りにしておく。他の問題は重要ではない、という訳ではなく、このブログの射程外。
2. この大量の論点をどう考えるのか
このようなフローチャートになるのではないかなと思っている。
<法令・手続きマター>
1. 一連の国有地の処理(and学校認可プロセス)は「制度的に(法的に)」問題が無かったか。
=法令によって守られている国民の財産(国有地)が不当に侵されたという事実はないか。
法令違反無し → 2へ 法令違反あり → 3へ
2. 全て合法的な処理だった場合、この制度を変える必要は無いのか。
=現行法令では国民の財産(国有地)を適切に管理できていないのではないか。
3. (違法行為を適切に罰するのは大前提として)
役所(行政官)が違法な処理をしなければならなくなった要因は何か。
役人が私腹を肥やしたかった → 完全にアウト、だけど今時そんな古風なことは・・・
政治的な圧力があった → 4へ
<政と官、官と民マター>
4. 政治から行政へのプレッシャーがあったのか、それともいわゆる「忖度」が生まれてしまったのか
5. 森友学園(民間)から、行政に対し、様々な手段を使っての働きかけはあったのか
あった場合、どのように防止するか(制度改正を行うか)
このような議論の順番になっていくのではないか
今回の経緯を見て思ったのは、
「こんなことはけしからん!」という一般常識的な議論と、
「ルール違反ではないか」という制度的な議論が混在してしまった上に、
次から次へと出てくる新情報や新キャラを追いかけることが最優先され、議論が順序立って行われなかったような印象を持っている。
だから「ところで結局何が問題なんだっけ」「よくわからないが、よくわからないことが問題だ、政府はけしからん」という人が大量に生まれてしまったのではなかろうか。
なお、今回もっとも強く強調したいのは上記フローチャートの2
2. 全て合法的な処理だった場合、この制度を変える必要は無いのか。
=現行法令では国民の財産(国有地)を適切に管理できていないのではないか。
この点について、しっかりと国会で議論してほしいな、ということである。
以下に述べる。
3. 「法令に則って適切に処理」
本件に限らず、事務方(官僚のことです)の答弁で頻出するのが、「法令に則って適切に処理」というもの。今回も連発されていた気がする。
いかにも役人答弁、「お役所仕事」という雰囲気を醸し出す答弁で、テレビの前で苛立った視聴者も多かったと思われるが、これに対して「法令ではそうかもしれないけどね! それで本当にいいと思ってるんですか!」という議論は、実は何も進まない。
まず明らかにしないといけないのは、
「法令上問題があったのか」
問題があれば、適切に処理するのは当然として、なぜそんなことが発生したのかを明らかにしないといけない。
仮に問題が無かった場合、じゃあ一件落着なのかというとそんなことはなく、
「今回は法令に則って適切に処理したことはわかったけど、その結果こういったよろしくない結果になっているから、法令を書き換えないといけないね、こう変えてみるのはどうでしょう」
という議論をする必要があると思っている。
国のルールを考えるのが国会であり、またそのルールの中身を詰めるのがお役所だったりするので、そういった仕事をしていきたいものである。
上記で挙げた論点のうち、
1-1. お値引きしすぎではないか=廃棄物除去費用算出根拠不透明、問題
1-2. そもそもなぜ売却価格が非公表だったのか、問題
については、議事録を読む限り、特に1-1は素人目に見て確かに謎ではあるが、法令違反は無いんだろう。
1-3. 国有財産審議会及び大阪府私学審議会における手続きの順序の問題
については、多少中身が込み入っているので何とも言えないが、この辺りの手続きは役人はかなり詰めると思うので、法令違反は無かったのではないかな、という気がする。
繰り返してしまうが、法令違反がなかったからOKというのではなくて、そもそもその法令で大丈夫?という議論をもっとしてほしかった。
4. 行政は法令遵守義務があるのと同時に法令に守られている
行政は法令遵守義務があるのと同時に、法令に守られているという側面もある。
例えば、ある許認可権限を持っている部署に勤務する職員のところに、とある政治家先生がやってきて、地元の有力支持者に便宜を図ってくれよ(本当なら認可してはいけないレベルだけど、そこをなんとか、みたいな)、と言ってきたとして、
仮に法令上問題無い形でできてしまうのであればものすごく断りづらいが、法令で禁止されて(例えばその処理は第三者委員会にかけないといけないとか数値基準があるとか)いれば、「ご協力したいのは山々なんですが、こういう理由でできない決まりになってるんですよね・・・・・・」と言えるという。
仮に
「何らかの強大なプレッシャーが、今回の関係省庁にかけられ」
且つ「違法な手続きは何ら行われなかった」とした時に、
「でもそれ、法律違反だからできないんですよ」
と言って断れなかった、ということが問題なのである。
5. 残りの論点についての私見
1-1〜1-3については少々言及したが、1-4〜1-6が残っているので多少コメントを。
1-4. 政治家が圧力をかけたのではないか、忖度があったのではないか問題
①とりあえず驚く
正直に考えてみると、
想像するに、確かに総理夫人事務所からtelがあったりしたらかなり驚く笑 そしてまず間違いなく、とりあえず上司に報告する。
あるいは、認可申請をしてきた書類をよく見たら、総理や総理夫人の名前が連なっていたりしたら、やっぱり多少扱いが変わってくると思う。少なくとも上司に報告する(報告してばっかりですね・・・)
でもこれって特に不思議なことではないのではなかろうか
例えば不動産屋にやってきた客が保証人の欄に「福山雅治」とか書いてきたら、とりあえず驚くし、何となく扱いが変わってくると思う。
②ただそれを以って法を犯すようなことはない、と思う
もちろん、営業の自由を有する不動産屋と、公益のために働く官庁を同列に扱っていいということを言いたいわけではない。福山雅治の知人にサービスをするのは不動産屋の勝手でも、官庁が恣意的にサービスしていいわけではない。
何が言いたかったかというと、「とりあえずビックリするのは誰でも一緒」ということが言いたかったのであって。
とりあえずこの案件は慎重に扱おう、ぐらいの気遣いはするが、それを超えて、総理案件だから法律を犯してサービスしちゃおうぜ!ということにはまずならない。それは結局自分たちのボスである総理に迷惑をかける結果になる可能性が低くないから。
もちろん、これはあくまで勝手な想像であって、本当はあったのかもしれないし無かったのかもしれないし、今後の捜査を待つしかない。
③圧力をかけてくる政治家は少なくない
霞が関で仕事をしていると、議員事務所から色々なお願いの電話がかかってくるのは珍しくない。これは就職するまでは知らなかった。
詳細なことを言うと色々と差し障りがあるだろうが、まぁ色々なお願いがある。
なので、この問題を本気で追求すると、色々困る人が出てくるのではないだろうか。
しかも議員秘書が議員先生本人に相談せずに、支持者からの依頼を官庁に取り次いでいて、先生本人が知らないような案件もあるような気がする。
1-5. 内閣総理大臣夫人秘書と公務との関係
これは、かなり難しい問題。
夫人秘書に限らず、各省の政務三役の秘書官は常にこの問題と隣り合わせである。
政務三役の秘書官はあくまでその役所の仕事(公務)を補佐するので、地元での選挙活動(これを公務に対して政務とよく言う)は関係ない。だから出張に同行したりすると、その役所のお金を使って政治活動をサポートした、ということになってアウト。
ただ、政治家先生のお仕事について、どこからどこまでが公務でどこからが政務なのか、というのを切り分けていくのはなかなか難しい。政務の出張先にも、公務の説明をするために着いていかないといけない、みたいなシーンも発生しうるし。
一口にこうすれば解決する、というアイデアは持ち合わせないが、いずれにせよこれは結構ややこしい問題です。
これだけ、今回の記事の中では毛色が異なる。
別に国有地の話と、森友学園の教育とは関係ないのだ。
今回の国有地処理の問題の何が問題だったのかというと、散々述べた通り、
「国民の財産である国有地が不当に安く売られたのではないか」
ということであって、そのお値段が問題なのであって、誰に売ろうが関係ない。森友学園だろうが大阪府だろうが、安く売られれば問題なのである。
今回はたまたま、売り先の森友学園が、なかなかアクの強い教育をしていたため、
「右翼のおじさんが偏った教育を行う小学校を設立するためあの手この手で国有地を安くGETした、けしからん」
というそこそこ面白いストーリーが出来上がってしまったのだが、本来、森友学園がどんな教育をしようが今回の問題には関係ないし、
仮に議論するとしても今回挙げたように「教育基本法上大丈夫か?」という話になるはずである。
本来は、国有地の売却スキームは今のままで良いか、という議論をするべきはずだったのに、こんなにキャラの立った関係者が大量に登場してしまって本質が見えなくなってしまったのは、この国の未来にとってはある意味で不幸だったのかもしれない。
なお、本文中、違法行為は無かったであろうという所感を記載しているが、これは役人仲間が違法行為を犯していませんように、という願望も含まれてしまっていて多少バイアスがある。会計検査院や検察等の機関の調査を待ちたい。
<おことわり>
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また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。
(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たって』 H25.6.28)