官僚ブログと政治的行為の制限
統合幕僚長(自衛隊のトップ)
論点は
「政治的な発言を行ったことと、政治的行為禁止規定の是非」
に加えて、発言が憲法がらみだったため、
ということになるんでしょう。
これを受けまして、そもそも公務員がブログをやるのってどうなんだろうとふと思ったので、こんな無名のブログが話題になることなんて万に一つも無いとは思いますが、ちょっと調べてみようと思ったのです。
なお、
まぁ、統幕長と違って、
1. 政治的目的とは?
まず、
※関係法令は、記事の下部にあらかた網羅しておきました。
国家公務員について定めた国家公務員法の第102条に「職員は、
まず、「政治的目的」ってなんだよ、ということになりますが、
a. 選挙で特定の候補を応援/反対すること
b. (選挙時に限らず)特定の政党を応援/反対すること
c. 特定の内閣を支持したり、政治の方向に影響を与えること
d. 決定した政策を妨害すること
これらが禁止されています。
d.は、
当ブログでは、少なくともd.は不可能ですし、a. b.も全くそんな意図は無いので、
ただし、この「政治的目的」の規定には補足があり、
人事院規則14―7(政治的行為)の運用方針について
http://www.jinji.go.jp/kisoku/
によれば、上記c.の「政治の方向に影響を与えること」
本号にいう「政治の方向に影響を与える意図」とは、日本国憲法に
定められた民主主義政治の根本原則を変更しようとする意思をいう
とあり、これは結構ハードルが高そうです。民主主義の根本原則を変更、
一方、同じく上記c.の「特定の内閣を支持」については、
本号中「特定の内閣を支持し又はこれに反対する」とは、特定の内
閣が存続するように若しくは存続しないように又は成立するように 若しくは成立しないように影響を与えることをいう。
とあり、こちらも、内閣の「存続」「成立」
2. 政治的行為とは?
「政治的目的」について前項で確認したので、次は「政治的行為」
まず、人事院規則に
政治的目的をもつてなされる行為であつても、
第六項に定める政治的行為に含まれない限り、 法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
という記載があります。政治的目的を持っていても、
この政治的行為は17項目も記載されており、「
a. 職名、職権などの影響力を利用
b. 金品をやりとり
c. 政党を作ったりお手伝いをする
d. 政治的なブツ(ポスターとか)や演劇を世に公開する、
いやこれどうなんでしょうね。少なくとも、
微妙に気になったのはd.で、正確には「
仮に、
自民党ってすごい!このマニフェスト(こちらをクリック)
とかやってしまうと、
特定の政党を応援するため(目的)に、
あとは、引っかかるとすればa.で、
「この法案の担当者だけど、こんな信じられない裏話教えますよ」
などという記事を、
これは、守秘義務にも違反しているので、
例えば、次官等の役職にある偉い人がブログで、
今回の統幕長発言については、
a. 職名、職権などの影響力を利用
して、現内閣を応援したと取られれば、政治的目的を持った政治的行為だと見なされかねないということでしょうか。
3. 憲法遵守義務
もはやブログと政治的行為の関係とは違う話ですが、
我々公務員は、自衛隊員を含め、憲法遵守義務が課されています。
日本国憲法第99条
私も入省する際に、憲法を遵守する、
第九十七条職員は、政令の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。
公務員は今の憲法を守らないといけないのに、
ただ、時間があればちゃんと調べますが、
憲法に反する行政行為を国家公務員が行えばそりゃもちろんアウトでしょうが、
そもそも憲法は改正されることを前提とした作り(96条)になっているわけで、
改正の議論に対して意見を述べることまで禁止されてるのかな?ってのがどうもよくわかりませんでした。
なお、今回の「憲法に自衛隊の存在明記、ありがたい」
今回は以上です。
<おことわり>
このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。
また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。
(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たって』 H25.6.28)
【資料集】公務員の政治的行為の制限に関係する法例集
※いずれも下線は筆者
(政治的行為の制限)第百二条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、 又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、 あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為を してはならない。 ○2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。○3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
(政治的目的の定義)
(政治的行為の定義)6 法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。 二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対す る代償又は報復として、任用、職務、 給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得よう と企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、 与えようと企て又は与えようとおびやかすこと。 十二 政治的目的を有する文書又は図画を国又は行政執行法人の庁舎(行政執行法人にあつては、事務所。以下同じ。)、 施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国又は行政 執行法人の庁舎、施設、 資材又は資金を利用し又は利用させること。
2 この規則の目的国の行政は、法規の下において民主的且つ能率的に運営されることが要請される 。従つて、その運営にたずさわる一般職に属する国家公務員は、 国民全体の奉仕者として政治的に中立な立場を維持することが必要 であると共に、それらの職員の地位は、たとえば、 政府が更迭するごとに、 職員の異動が行われたりすることがないように政治勢力の影響又は 干渉から保護されて、 政治の動向のいかんにかかわらず常に安定したものでなければなら ない。又、この規則による政治的行為の禁止又は制限は、同時に、 他の職員の側からするこれに対応する政治的行為をも合せて禁止す ることによつて、 職員がこれらの政治的行為の禁止に違反しないようにすることが容 易に達せられるようなものでなければならない。この規則は、 このような考慮に基き、 右の要請に応ずる目的をもつて制定されたものである。従つて、 この規則が学問の自由及び思想の自由を尊重するように解釈され運 用されなければならないことは当然である。
4 政治的行為職員が行うことを禁止又は制限される政治的行為に関し、この規則では政治的目的と政治的行為を区別して定義し、 政治的目的をもつてなされる行為であつても、 この規則にいう政治的行為に含まれない限り、 国家公務員法第102条第1項の規定に違反するものではないとし ている。 (1) 政治的目的(四) 第4号関係 本号中「特定の内閣を支持し又はこれに反対する」とは、特定の内閣が存続するように若しくは存続しないように又は成立す るように若しくは成立しないように影響を与えることをいう。 なお、 特定の内閣の首班若しくは閣員全員を支持し又はこれに反対する場 合も本号に含まれるものと解する。
(政治的行為の定義)第八十七条法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的行為は、 次の各号に掲げるものとする。 一 政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること。 二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政治的目的を持つなんらかの行為をし、 又はしないことに対する代償又は報酬として、任用、職務、 給与その他隊員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得よう と企て、又は得させようとし、あるいは不利益を与え、 与えようと企て、又は与えようとおびやかすこと。 三 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費若しくはその他の金品を求め、若しくは受領し、 又はなんらの方法をもつてするを問わず、 これらの行為に関与すること。 四 政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え、又は支払うこと。 五 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し、又はこれらの行為を援助すること。 六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。 七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、若しくは配布し、又はこれらの行為を援助すること。 九 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し、若しくは指導し、又はこれらの行為に積極的に参与すること。 十 政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること。 十一 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、 公に政治的目的を有する意見を述べること。 十二 政治的目的を有する文書又は図画を国の庁舎、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他政治的目的のために国の庁舎、施設、 資材又は資金を利用し、又は利用させること。 十三 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、 又は多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、 あるいはこれらの用に供するために著作し、又は編集すること。 十四 政治的目的を有する演劇を演出し、若しくは主宰し、又はこれらの行為を援助すること。 十五 政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他政治的団体の表示に用いられる旗 、腕章、記章、えり章、服飾その他これに類するものを製作し、 又は配布すること。 十六 政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し、又は表示すること。 十七 なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免かれる行為をすること。 2 前項各号に掲げる行為(第三号の場合においては、前項第十六号に掲げるものを除く。)は、 次の各号に掲げる場合においても、法第六十一条第一項 に規定する政治的行為となるものとする。 一 公然又は内密に隊員以外の者と共同して行う場合二 自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合 三 勤務時間外において行う場合
(服務の宣誓)
第一条 新たに職員(非常勤職員(国家公務員法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。) 及び臨時的職員を除く。以下同じ。)となつた者は、 任命権者又はその指定する職員の面前において別記様式による宣誓 書に署名して、任命権者に提出しなければならない。
第三十九条 隊員(自衛官候補生、学生、生徒、予備自衛官等及び非常勤の隊員(法第四十四条の五第一項 に規定する短時間勤務の官職を占める隊員を除く。 第四十六条において同じ。)を除く。以下この条において同じ。) となつた者は、 次の宣誓文を記載した宣誓書に署名押印して服務の宣誓を行わなけ ればならない。自衛官候補生、学生、生徒、 予備自衛官等又は非常勤の隊員が隊員となつたとき(法第七十条第 三項 又は第七十五条の四第三項 の規定により予備自衛官又は即応予備自衛官が自衛官になつたとき を除く。)も同様とする。
宣 誓
私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法 及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、 常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的 活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、 事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、 もつて国民の負託にこたえることを誓います。