若手キャリア官僚は今こんなことを考えています

霞ヶ関で働く現役の若手官僚が思ったことを書いていきます

キャリア官僚不人気! の報道について思うこと

  今年は志望者にとってはチャンスらしい笑

www.nikkei.com

abematimes.com

 

 日経の方は有料記事なので、ヘッドラインしか読めませんが、要点は

・今年度の総合職試験申し込み者は、前年度比6%減の2万591人。1970年度以来47年ぶりの低水準。

・理由はざっくり言うと「コスパが悪い」

 ということみたいです。

 

 今回はこの記事をテコにして、色々と考えてみました。

 

 

1. 「減少」にも色々ある

 さて、今回の「志望者減少」報道ですが、結局のところ、どのような層が減少しているか次第で、好景気時のいつもの出来事なのか、憂うべき事態なのか、が全然違ってくるということです。

 「景気が良い時に志望者が減り、不景気時に志望者が増える」

 これは、昔からある話です。むしろ、採用する側からすると「景気動向で志望を辞めるようなやつは最初からいらん」という発想があります。もともと、政府の政策というのは長期的な視点が求められるのであって、「不景気だから公務員」という短期的・短絡的な発想はキャリア官僚の志望動機にはそぐわないのです。

 むしろ景気が良い時は、「安定を求めて公務員」という層を落とす必要がなく、むしろそんな時でも志望してくれるという意味で、「不景気はキャリアの一次選抜」と言っている採用担当もいました。

 

 

2. キャリア官僚の志望者層を独断と偏見で分析

 

 この報道を考える上で、どういった学生がキャリア官僚を志しているのかということを少し考えた方が良い気がします。客観的なデータではなく完全に私の感覚ベースなので、どこまで正しいかは謎です。

 また、MECEになっているわけでもありません。

 

 ① 憂国の士

 ② 優柔不断層

 ③ 特定省庁型

 ④ 特殊技能保持者

 ⑤ 公務員志向

 ⑥ 政治家予備軍

 

 ① 憂国の士

  【特徴】

   ・純粋に世の中の役に立つ仕事をしたいと思っている

   ・民間企業を回ったがしっくりこなかったパターンと、最初から視野に入っていないパターンがある。後者は、視野狭窄に陥っているケースもある。

   ・就職活動においては、国家公務員一本か、併願しても日銀や、DBJ,JBIC等の政府系金融機関

   ・給与等の待遇は二の次に考える傾向

 

  【主な言動】

   「公(おおやけ)のために仕事をしたい」

   「大きな視点」

   「ルールメイカーになりたい」

   「ノーブレス・オブリージュ

 

 ② 優柔不断層 

  【特徴】

   ・よく言えばジェネラリスト、悪く言えば「優柔不断」

   ・これといってやりたいことが決まっていない中で、官僚は今でも比較的高い社会的地位とやりがいを維持しているため、(あえて経済学的な記述をすると)これまで投下して来た教育コストを回収する為に官僚をファーストチョイス。

    ※この人たちは中高受験や大学受験及び大学の授業で公務員試験の試験範囲をあらかたカバーしてしまっている為、「試験のための準備」がほとんど必要ない

   ・この層には、大学1〜2年次に司法試験、公認会計士等の「士業試験」の準備をするも、諦めたか、何かしらの違和感を感じて、公務員試験に流れてきた者もいる。

   ・就職活動においては、試験前年に、「腕試し」と称して外資金融・コンサルを受けることが多い。普通は、決まったらそちらに行くと思われるだろうが、「官僚になってからでも転職できるが、官僚は新卒じゃないとなれない」として、官僚をファーストキャリアに選ぶ者も結構いる。

   ・当然、おおっぴらに「とりあえずまずは官僚になってみようかなと」などとは面接で言えないので、志望理由は適当に作る(こういう作業も上手)。よって、外面は①憂国の士と見分けがつかない

 

  【主な言動】

   「公(おおやけ)のために仕事をしたい」

   「議論が好き」

   「留学制度について教えてください」

 

 ③ 特定省庁専願型

  【特徴】

   ・「キャリア官僚になりたい→どの省庁にしようか」ではなく、最初から特定の省庁を志望しており、他の省庁にはあまり興味がない。「憧れ」といった方がいいかもしれない。

   ・その性質上、当然すべての省庁に存在しうるが、特に、外務省、警察庁に多い印象。昔の大蔵・通産にも多かったのだろうが、今はそんな感じがあまりしない。

   ・官庁訪問においては、その本命省庁だけ訪問するというツワモノもいる。民間企業の併願は、その志望省庁による。例えば、外務省+総合商社、財務省+日本銀行(民間企業じゃないけど)等。文字通りその省庁一本の志望者もたまにいて、彼らはダメなら大学院進学等。

 

  【主な言動】

   「小説に感動した」

   「大学で○○さん(省庁OB)のゼミを取っていた」

   「祖父or父が○○官僚でした」(かなり少数ですが)

 

 

 ④ 特殊技能保持者

  【特徴】

   ・いわゆる「技官」候補生

   ・何かしらの特殊技能・知識を有しており、それを活かせる場としてキャリア官僚を選択

   ・政治にそこまで興味がないが、予算配分には敏感

   ・就職活動においては、研究室に残るか、民間企業の研究開発部門が競合。最終的には指導教官の意見も少なからず影響がある。

 

  【主な言動】

   「何を理系の学生に求めますか」

 

 ⑤ 公務員志向

  【特徴】

   ・キャリア官僚になりたい、というよりは、「公務員になりたい」

   ・割と幅が広く、パブリックマインドが強い者もいれば、どちらかというとその安定性に惹かれている者もいる。千差万別。

   ・「国」に固執しているわけではないので、地方公務員と悩むことも多い。逆に①〜③の者は、地方公務員と悩むことはほぼ無い。

 

  【主な言動】

   「やはり多忙なのでしょうか」

 

 ⑥ 政治家予備軍

  【特徴】

   ・政治家になるためのステップとして、キャリア官僚をチョイス。

   ・ゲームの構造上、

    財務省(予算・税を筆頭に、あらゆる金回りを所管)

    自治省総務省自治のこと。首長になるならこれ以外無い)

    経産省(官僚の中では比較的「自分の政策」を持ちやすい)

    国交省(時代は変わりつつあるが、インフラと政治は仲良し)

    あたりに多数生息

   ・就職活動では、あまり決まったパターンは無い。たまに、政治に切り込んでいけるから、という理由でメディア関係(テレビ・新聞社等)を受ける者が散見されるが、多数ではない。

   ・なお、霞ヶ関に就職後に、政治家のリアルに触れて、政治家志望をやめたり、逆にそれまで興味は無かったのだが、お声がかかるなどして政治家を志す者も一定程度いる。

 

  【主な言動】

   彼らは、役所内において政治家予備軍として見られることのリスクを知っているため、就職活動中から就職後を通じて、それと明確にわかるようなことはほとんど言いません。もちろん、気を許せる仲間には打ち明けます。

 

 

3. どの層が減っているのか

 

 ではどの層が減っているのか、というのが大事になってくるわけですが、残念ながらそんなデータは存在しないので、それはわかりません。

 私が考える傾向としては、

 【景気変動に左右されない層】

 ① 憂国の士

 ② 優柔不断層

 ③ 特定省庁型

 

 ⑦ 政治家予備軍

 

 【景気変動に左右される層】

 (② 優柔不断層)

 ④ 特殊技能保持者

 ⑤ 公務員志向 

 

  というイメージです。

 憂国の士

  景気変動に関係なく、国を憂う人たちです。一定以上のボリュームを常に占め続けています。

 ③ 特定省庁型 

  景気変動に関係なく、ある種の「憧れ」で志望してくれているので、景気はほとんど関係ありません。

 ⑦ 政治家予備軍 

  自分の人生戦略が最優先なので景気は関係なしです。

 

 ④ 特殊技能保持者 

  自分の知識・技術を世の中の為に使うことが最優先なので、好景気時に企業が研究職の採用を増加させるなどすれば、そちらに人材を取られる恐れがあります。

 ⑤ 公務員志向 

   「コストパフォーマンス」に敏感な人たちで、得られるベネフィットに比べてコストが高ければその道は選びません。好景気時で企業が採用を拡大している場合は、試験の準備にかける相対コストが増加するため、民間に流れる傾向があります。

 

 ② 優柔不断層 

  彼らを両方に分類したのはわけがありまして、普通に考えると彼らは景気に左右されそうなものですが、実はそうではありません。というのは、彼らは勉強もできるしコミュニケーション能力もかなり高い、ざっくりいうと「できるやつ」なのです。景気が良かろうが悪かろうが就職活動でちゃんと内定を取れるんです。それでも官僚を選んでいる層が②です。上記分類は「就活生全体」の分類ではなく、「官僚志望者」の分類なので。彼らは意外と、不景気でも依然として官僚を選んできます。

 

 

 そして実際のところ、ものすごく乱暴に言うと、役所が欲している人材は「景気に左右されない層」なので、短期的に志望者が減ろうと大きな問題にはなりません。おそらく、この数値を見ても、各省採用担当はそんなに焦っていない気がします。

 

 

4. 危険な減り方と、コア層の行動原理

 

 逆にいうと、

 ① 憂国の士

 ② 優柔不断層

 ③ 特定省庁型

 (⑦ 政治家予備軍)

 彼ら(コア層、と呼びましょう)が減っているとすると、それはかなりまずいです。

 つまるところ、

 「この国をよくしたいが、少なくとも官僚にはそれができない」

 「面白い仕事が霞ヶ関には無い」

 という、非常に単純ながら、職選びの根幹を揺るがす変化が起こっているということだからです。

 基本的に、コア層はそのような言説には頑健でした。コア層は、良い意味で、労働市場のマーケット原理からかけ離れた存在だという人がいます。コア層は、給与水準で自分たちの職を決めるわけではありませんし、ワークライフバランスがより整っている他の企業に流れるわけでもありません。

 しかしもう少しきちんと考えると、彼らも当然労働市場の原理に沿って行動しています。

 それは、霞ヶ関が「政策立案という労働を独占供給している」ために、その職に就きたい者は仕方なく、悪条件を飲むしかないのです。それだけの話です。なので、職場環境の改善の動きはどうしても鈍くなっちゃうんですね。

 

 だから、政策立案、という、雇用側にとって唯一のカードの価値が低下すれば、当然、コア層であっても離れていってしまいます。

 

 

 いずれにせよ、今回は今年の志望者が減ったという話でしたが、結局どの層が減ったのかは多分最後までわからないので笑

 志望者の方・・・とにかく最終合格&内定のために頑張る

 霞ヶ関・・・職場環境の改善には不断の努力を行う

 

 ということに尽きますね。

 ちょっと疲れてきたというか、もう朝なので笑、これからのあるべき論のような話は別の記事にしようと思います。

 

<おことわり>

 このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。

 また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディア私的利用に当たって』 H25.6.28)