若手キャリア官僚は今こんなことを考えています

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2017年の国の予算 <2017年国会 その2>

2017年国会(正しくは第193回国会)を振り返るシリーズです。

 

今回は、前回書いた森友問題や、共謀罪、諸々の失言問題の裏?で、しれっと通っていた超重要トピック、2017年度の国の予算について扱ってみようと思います。

 

 

予算 まとめ とかで検索しても、意外と出てこないんです。びっくりです、超大事な話のはずなのに。

 

しかし、重要であるからこそ、予算全体は膨大なサイズで、とても一本の記事でカバーしきれるようなものではないため、今回は

●そもそも予算ってなんで大事なのか

●どのような文脈の中で編成された予算なのか

●全部大事なんだけれども、その中でも特に(政府的に)重要なトピック

に触れるとともに、

興味が湧いてしまった人のために、

●どうやって予算のことを調べるのか

について記すことを念頭に置いていきたいと思います。

想像以上に政府はかなりの情報を開示しているのですが、いかんせん政府のホームページってのは見づらいので、行政に関心が無い人がいざ情報を探そうとしても霞を掴むような状況になりがちなんですよね。

 

 

 

1. そもそもなぜ予算は大事なのか

 

 国を動かすために政府が持っているツールは、極論を言えば法律と予算しかありません。ルールか金か、です。(もちろん細かく見ていくと、租税特別措置とか色々ありますけれども)

 経済対策とか貧困対策とか少子高齢化対策とか、いろんな施策がありますが、結局は、政府が直接お金を使って何かするか、法律を作るか変えるかして民間主体に対して縛りをかけるか、この二つの方法に落とし込まれるわけです。

 だからこそ、予算は非常に重要なツールですし、それを所管する財務省は省庁の中でも飛び抜けてパワフルだということになっていますし(最近は、弱体化する財務省、というトピックが一部報道で流行ってますが、それでも役人から見ると財務省は依然として一定のプレゼンスを持っています)、それを議論する予算委員会は数ある委員会の中でも注目度が高いわけです。

 そして、平成29年度予算を知ると、政府は平成29年度、すなわち今年度に一体何をしようとしているのか、がだいたいわかるわけです。

 

 

 

2. 平成29年度予算の概要

 基本的に予算関係の政府の資料は長くて見辛いのですが、その中でも予算を概括するにあたって見やすいのは財務省の資料だと思います。これをちゃんと読もうという人はこの記事読む必要ありません。

財務省 平成29年度予算のポイント

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2017/seifuan29/01.pdf

 あるいは成立時の報道を見てもだいたいの雰囲気はわかります。

www.sankei.com

 

2-1 今年も大盤振る舞いだった「過去最大規模」の予算

 「国が抱える借金」というフレーズがかなり浸透してきたような気がしますが、その借金は依然としてシャレにならないレベルではあるものの、過去最大規模の予算が組まれました。その額、97兆4547億円です。

 報道では「過去最大」と言っているもののあえて「過去最大規模」と言っているのは下で細かく書いてますが、要は「今年も大盤振る舞いなんだな」ということを頭に入れておけばいいです。

 

 [コラム 過去最大予算の罠]

 この「過去最大」というワードは曲者でして、末尾に「お断り」として書いてあるので詳しくはそちらを参照していただきたいのですが、予算には年度当初に組む「当初予算(本予算)」と、年度途中で組む「補正予算」があり、ここで言っている「過去最大」とはあくまで「当初予算」を比較した結果なのです。

 もはや補正が組まれない年なんてない中で、当初予算の規模だけ比べるのにどれだけ意味があるのか、正直私にはよくわかりません。更に言えば、予算はあくまで予定であって、実際に使った額(=決算)を比較しないといけないんじゃない?という意見も十分聞くに値します。過去最大の予算を組んでも実際は全然使いませんでした、なんてことがあっても「過去最大の予算」に変わりはないですから。確かに、予算案の議論は盛り上がりますが、実際にどう支出したのかという決算の議論ってほとんど注目されませんよね。

 なお実際のところ、当初+補正の合計歳出予算額を見ていくと、

 平成24年度が100.5兆円

 であり、それ以降平成28年度まで、予算の合計で見るとこの平成24年度の額は超えていません。平成28年度は今国会で成立した3次補正を合わせて100.2兆円となりました。

 更に決算ベースで言えば平成21年度の101.0兆円の支出が最大となっています。あの震災が起こった平成23年度(支出:100.7兆円)よりも支出していたんですね。こりゃ一体どんな大事件があったのかというと、お分かりだと思いますが、世界金融危機です。これにより、麻生政権において経済危機対策として13.9兆円もの補正予算が組まれました。しかしながら経済は上向かず、歴史的な政権交代へと突き進んでいくわけです。

 こうやって、予算の数字を眺めるだけで世の中の動きがわかるわけですねー。とんでもない予算が組まれている背景には何かしらの政治・経済上の事件が起こっています。面白いでしょ?

 もっと数字を見たい!という勉強熱心な方はこちらをどうぞ、あまりオススメしませんが

 財務省 統計表一覧

http://www.mof.go.jp/budget/reference/statistics/data.htm

 

2-2 「経済・財政計画」の2年目である

 冒頭ご紹介した、財務省による「予算のポイント」を見た真面目なあなたは、多分一行目でつまずくはずです。

「経済・財政再⽣計画」2年⽬の予算として、経済再⽣と財政健全化の両⽴を実現する予算

財務省 平成29年度予算のポイント)

 

 「経済・財政再生計画」って何やねんと。しかも2年目とか、知らんしと。

 しかしこれは霞が関の文書にはよくあるパターンです。

 つまり「既に決まっている○○に従って、こうします(こうするしかないです)」という文学です。逆にいうと、この「○○」がクソ重要なのはもうお分かりですね? やりたいことがある場合、いきなり「こうします」と言うと唐突感MAXなので、予め「○○」にあたるものを作って、それからやるのが基本戦術です。この「○○」は法律のケースもあれば、「閣議決定」のパターンもありますし、様々です。

 それはさて置き。

 まず、借金をいきなりは無理にしても徐々に減らしていきましょうね、という財政上の大きな理念があります。

 その理念を実現するために・・・・・・、

 期限を切らないと人も会社もやる気にならないので「2020年までに国・地方合わせたプライマリーバランスを黒字化します」という目的を2013年に設定しました(※)。

 

 その目的を実現するために・・・・・・、

 2015年の夏、つまり、上記の目標まであと5年というタイミングで、5年間でPB黒字を実現する計画を作りました。これが「経済・財政再生計画」であり、それが書き込まれている文書が「骨太の方針2015」であり、その骨太の方針を決定したのが「経済財政諮問会議」なのです。諮問会議と骨太はコラム行きです。

 この「経済・財政再生計画」には、歳出は増えたとしても+1.6兆円までにしましょうとか、結構具体的な数字まで書き込まれているのです。

 えらい入れ子構造になっていますが、今の日本の財政にはこういう文脈があるのです。骨太2015を踏襲して編成された最初の予算は2016年度の予算になりますので、今年度の予算が「経済・財政計画」2年目になる、ということですね。

 

 ※実は、この2020年PB黒字化をいつ言い出したのかは自信がありません。財務省が発行している財政関係資料に、2013年中期財政計画が出どころのような記載があったため、それを拠り所にしました。間違っていればぜひご指摘ください。

 財務省 日本の財政関係資料 平成29年4月

http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201704_00.pdf

 内閣府(閣議了解) 中期財政計画 平成25年8月 

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2013/2013_chukizaisei.pdf

 

 [コラム 経済財政諮問会議骨太の方針]

 橋本政権が省庁再編をやった時に、官邸の権限を強めるために総理の諮問機関として設立されたのが発端です。さらに小泉政権が予算編成プロセスにおいて官邸の影響力をさらに強めるために「骨太の方針」という政府の大方針を打ち出すことをはじめました。これがすっかり馴染みまして、夏は骨太の季節という感じがします。我々はよく「骨太(ほねぶと)」と略します。

 なお、政府には会議多過ぎじゃない?とよく言われまして、確かにめちゃくちゃたくさんあって、それの準備をするのがかなり大変だったりするのですが、一口に会議と言っても構造上、色々な種類があります。

 大体、政府の会議の第1回の資料を見ると「なぜこの会議を発足させるのか」が書いてある資料が配られているはずです。その中には、法律で決まっているものもあれば、特に裏付けがないふにゃふにゃしたものまで千差万別ですね。

 その点、この経済財政諮問会議内閣府設置法という法律に書かれているので、かなりカッチリした建てつけになっている上、議長が総理ということもあり、数ある会議の中でもSクラスの重要度です。(政府の会議体重要度ランクとかいうネタを考えたけど、星の数ほどありそうな上に、なんか怒られそうだからやめましょう)

内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)(抄)

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/about/setup.pdf

 なお、法律で決まっているから良い会議、というわけではないことを付言しておきます。そもそも法律で決まっているけどほとんど稼働していない会議とかありそうですし。

 

2-3 一億総活躍がバズワード(にしたいと思っている)

 

 国家総力戦を彷彿とさせる、などと賛否両論が絶えない「一億総活躍」ですが、今回の予算も一億総活躍が一つのキーワードになっています。

 実際中身を見てみますと(ようやく中身の話になった。話が長すぎますでしょうか)こんな施策が含まれています。

 

 (1)「保育園落ちた日本死ね」に代表される、子育て問題への対応

 -保育士等の処遇改善

  全職員2%の処遇改善。副主任保育士等は月+40,000円

 -保育の受け⽫拡⼤等

  待機児童解消加速化プランに沿って受け⽫拡⼤を着実に実施

 -育児休業制度の拡充

  保育所に⼊れない等の場合の最⼤期間を1歳6か⽉から2歳までに延⻑。

 

 (2) 教育

 -給付型奨学⾦

  月3万円を軸に平成30年度から

 -無利⼦奨学⾦の拡充

  低所得世帯の⼦供に係る成績基準を実質的に撤廃

 

 さらに、経済再生のための政策があり、

 (3) 経済再生

 -科学技術振興費増加

  ⽇本経済の成⻑⼒を⾼めるような研究開発への重点配分

 -第四次産業革命

  ⼈⼯知能、ロボット、IoT、⾃動⾛⾏、サイバーセキュリティ等

 

 あとは、プレミアムフライデー等で話題になっている「働き方改革」政策も含まれています。

 (4) 働き方改革

 -長時間労働の是正

  勤務間インターバルを自発的に導入する中小企業を支援

 -同一労働同一賃金

  正社員転換や処遇改善などに取り組む企業を⽀援

  

この辺りが目玉施策ということになっています。

 

各項目に触れだすとキリがないのでこの辺で打ち止めにしておきます。

もっと知りたいぞという方は、4. 予算についてもっと知りたくなってしまった場合 を参考にして調べてみてください。

 

4. 予算についてもっと知りたくなってしまった場合

 

 そもそも国の予算、国の財政全体について包括的に知りたいという方は、財務省が公表している「財政関係資料」に目を通すのが一番いいと思います。この記事を書く上でもかなり参考にしました。

www.mof.go.jp

  本で読みたいぞ、という方は、同じく財務省が監修している「図説 日本の財政」がいいと思います。公務員試験を受験する人は参考資料としてもうお手持ちかもしれませんね。 

図説 日本の財政 平成28年度版

図説 日本の財政 平成28年度版

 

 

 さらに、各省の予算についてもっと詳しく知りたいぞ、という方は、とりあえず財務省のページに財務省が作成した「各予算のポイント」が公表されています。

www.mof.go.jp

  例えば、今もっとも大きな部分を占める社会保障関係予算はこんな感じです。

平成29年度社会保障関係予算のポイント

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2017/seifuan29/13.pdf

 

 さらに詳しい施策の中身が知りたいとなると、各省のホームページを見ていくしかありませんが、これがまたどの省庁もわかりにくいんですが、大体どの省庁も「予算・決算」みたいな名前のページがあるはずで、そこから見れるはずです。

 例えば、先ほど例として挙げた社会保障関係を所管する厚生労働省にはこのようなページがありますね。

www.mhlw.go.jp

 

  こんな形で、税金が何に使われているのかわからない!というご批判をよく耳にしますが、(見やすさはさて置き)税金の使途は基本的に全て開示されてますので、見ようと思えば誰でも見れます。

 もちろん、詳しく見ても内容がよくわからない予算があったりするのが困りものなのですが。

 

 なお今回、予算について書いてみよーと思って、特に詳しいわけではないにも関わらず手をつけてみましたが、結構手こずりました笑 特に、財政健全化目標部分。

 仮にも霞が関で行政官やってる人間でも経緯を理解するのに苦労する部分があったので、財政健全化目標の部分はもう少しわかりやすい説明の場がないといけないのかなぁとか思いました。

 もちろん財務省がちゃんと資料を公表しているわけですし、時間をかけて読み込めばわかるのですが、私みたいなこんなレアなブログを書いているような人間か公務員試験を受けるような人でない限り、財政関係資料なんて読まないし、財政健全化目標何それおいしいの、って思ってしまう気がします。

 

<補足>当初予算と補正予算

 タイトルから「予算」と言っていますが、正式には、予算ではなくて「当初予算」と言うべきではあります。これは、普通は年度の途中で、例えば甚大な自然災害が起こる等のアクシデントが発生した場合、既に組んでいる予算だけでは対応できないので、「補正予算」を組むのですが、その補正予算と区別するために、当初に成立している予算を「当初予算」とか「本予算」と言うのです。

  なお実際は、自然災害で補正を組むことはもちろんありますが、我々霞が関ぴーぽー的にはむしろ「経済対策」のために補正を組むというイメージが強いです。「対策=補正」と思って結構です。

 災害はわかるけど、それ以外の理由でお金を使っちゃうって大丈夫なの?というのは古来からある議論ですが、それはまた別の話になっちゃうので割愛します。そもそもそんなに詳しくないし。

 第二十九条  内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。

 法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合
 予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO034.html

 

 

 

<おことわり>

 このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。

 また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディア私的利用に当たって』 H25.6.28)