若手キャリア官僚は今こんなことを考えています

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「立法」と「法律の立案」の違い

下記の弊記事についてご質問をいただきました。

kasumigasekipeople.hatenablog.com

 

 id:JACKAL630

立案という言葉についてご質問します。
①立案=立法
②立案≒立法(大体同じ意味)
③立案⊆立法(立法は立案を含む)
④立案⊇立法(立案は立法を含む)
⑤それ以外

大雑把にいうと、立法府は法律を作る、行政府はそれを実行すると理解していますが、立案という言葉は上記の①~④のどれと思えばいいでしょうか?
それとも全く見当違いでしょうか?

ざっくりとした質問で申し訳ありません。

 

回答を書いていたら結構長くなってしまってコメント欄では読みづらくなったので、一つの記事にしてしまいました。

 

 

 

 

ご丁寧な形での質問ありがとうございます。

 

その五択だと、⑤だと思うんですね。

 

1. 法律を作るとは、何か

 

まず、前提となるid:JACKAL630さんの「理解」の部分なのですが、「立法府は法律を作る」の部分について、補足が必要だと思いました。

 

政治経済・公民の教科書では確かに、「国会(立法府=立法する」となってますし、そもそも「立法」府なわけですから立法するのは当たり前なのですが、この「立法」という言葉と、それを噛み砕いた「法律を作る」という言葉の間に、若干の乖離がある気がします。

 

国会は「提出された法案」について審議(議論)をして、法案を成立させ、それが法律となって世の中のルールを規定するわけでして、そのことを「立法」と呼んでいるわけですが、では、誰が法案を「作って」国会に提出するのでしょうか。

 

2. 法律の「案」は誰が作って国会に提出するのか

 

ざっくり分けると、

①国会議員

②内閣

の2パターンがあります。

 

国にとっての大事な話なので、これはもう、我が国の最高法規である憲法を読みましょう。

2-1. 議員立法

 

①については、

第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

これが根拠になっていて、まぁ、国会が立法機関なのだから、当然に、その国会の構成要員である国会議員は、法案を国会にはかることができるということです。

ちなみに、国会法においては(下線はおおくぼ)

第五十六条 議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。

と規定されていまして、ある程度の人数の意見をまとめないと、国会に提出はできませんよ、ということになっています。

 

このやり方を、「議員立法」と呼びます。

 

「議員によって法律案が発議され、成立した法律」は、一般に「議員立法」と呼ばれています

議員立法|衆議院法制局

 

ちょうどニュースになってましたが、例えばこういうやつです。

www.nikkei.com

 

 

多分、教科書的には、「国会が立法します」となっているので、これがメインのやり方のように捉えている方も多いと思います(なので、役人が「実は」法案を「影で」書いている、けしからん、という論調が、多数ではないものの一定程度あるんだと思います)。

 

ただ、実はもう一つ、国会に法案を提出するやり方があるのです。

 

2-2.閣法(内閣提出法案)

 

内閣(総理大臣)も法案を国会に提出することができます。

これは何も、隠れてコソコソ悪いことをしているわけではなくて、先ほど見たのと同じく、日本国憲法で規定されている正当なやり方です。

 

第72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

 

で、内閣の下にぶら下がっている私たちが、総理・内閣・内閣を構成する各大臣、の指揮の下で、法案を書いたりするわけです。

 

その「案」は、「国会に提出するぞ」という閣議決定を経て、立法府である国会に提出され、議論され、可決されれば法律になります。

 

 

では、議員立法と閣法はどちらが多いでしょうか?

答えは本記事の末尾にて

 

 

3. 法律の立案、及び、お答え

ここからは、本気でやるなら「立法の定義」を議論していかないといけないのですが、それはもう学術的な議論をガチでやらないといけないので、このブログで扱う話ではないと判断しました。

 

例えば、こういう文章を読んでいただければ、厳密な議論はなかなか骨が折れそうだぞ、という雰囲気を味わっていただけるかと思います。

kotobank.jp

 

ただ、社会の議論に参加する上では、厳密な議論を押さえる必要はないので、これまでご紹介したような、法案成立までの大体のプロセスを知っておけば大丈夫だと思うのですね。

その上で、ざっくりとした話を続けさせていただくと、

 

 

①立案=立法
②立案≒立法(大体同じ意味)
③立案⊆立法(立法は立案を含む)
④立案⊇立法(立案は立法を含む)
⑤それ以外

 

 

という選択肢をいただいておりますが、

私たち公務員がやっている法律の「立案」ということであれば、⑤になると思います。私たちが立案したものが、閣議決定を経て、国会による立法プロセスに乗っていくわけですから、別物です。だから、⑤。

 

議員立法であれば、国会議員による「立案」は、立法プロセスの一つと言える気がするので、③が近いのかなぁ。

 

4. 政策の立案

ちょっと蛇足感がありますが、

 

ご質問いただいた私の記事では、私は微妙にラクをしていまして、「政策の立案」と「法律の立案」とを、ぐちゃっと混ぜこぜにして議論しているのですね。

 

政策ツールというのは、法律だけではありません。

まずでかいところでは予算がありますし、税制改正もかなり大きなツールです。(年末まではそれで大忙しです)

あるいは、行政府内で手続きが完結する政省令もあります。

今話題になっている通商政策や国防・外交などは、条約とか、そういう世界でもありますし、どういう交渉カードを切っていくかというネゴシエーションの戦略立案は、別に条約とも関係ないですね。

政府が音頭とって派遣団を組織して、アフリカにレアメタル取りに行く、みたいなのは、もはやなんなのでしょうか。

 

それらも含めて、政策を立案しているので、そこまで含めた「立案」ということになると、いよいよ⑤ということになってくると思います。

 

 

 

 

文中のクイズですが、答えはこちら

最近における法律案の提出・成立件数 / 内閣法制局

 

閣法の方が多いのでした。

 

 

 

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最近完全に消化不良になってますが、回答率80%を目指します。

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<おことわり>

 このブログは私が所属する組織の見解を示すものではなく、あくまで個人の見解に基づくものであります。

 また正確性を一義的な目的とはしていないため、事実であるかどうかの裏づけを得ていない情報に基づく発信や不確かな内容の発信が含まれる可能性があります。

(参考:総務省 『国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たって』 H25.6.28)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000235662.pdf